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飛行機がつなぐ恋心 また会えたね
https://estar.jp/novels/26238809
🌱雨月隆之介と市原莉子が初めて待ち合わせた、スミカグラス鞍月
額に汗を流し全速力で走った僕は肩で息をしながらその建物を仰いで見た。その店の名前はスミカグラス鞍月、日本家屋の外観、燻した木材の格子戸の前で僕は怯んだ。
(お小遣い、800円しか無いよ)
ウォールナットの美しい木目、艶やかな手触りのテーブル、天井からはペンダントライトが暖色系の明かりを灯しアイボリーのカーテンが空調に揺れた。
❌半分に切り分けて食べたパンケーキ
定休日でした
🌱莉子が夏期講習で自習した図書館
参考書にマーカーを引く莉子の隣で僕はあみだくじを作った。2本線のあみだくじの行き着く先は合格と不合格、莉子はそんな僕を叱り付けた。
🌱金石街道
夏の青い草の匂い、肌に湿った風が纏わりつき時速18kmの景色が流れて消えた。やがて道路は市街地に入り歩行者信号機は青色と赤色を繰り返した。金沢駅西口を通り過ぎやがて国道8号線の高架橋を越えるとその道は金石街道と呼ばれる直線道路へと変わった。
「この道はなんて言うの」
「金石街道」
「よく知ってるね」
「父さんと港に釣りに来るから」
「ふーーん」
郊外へと2人を誘う一本道、僕のペダルは颯の様に駆け抜けた。
🌱金沢市を見渡せる展望台
莉子はそう言うと僕の肩を支えながら人差し指で天空を仰いだ。そこには細かな宇宙の塵が煌めいていた。
「蔵之介、獅子座流星群よ」
「え」
「今夜、獅子座流星群が一番見える日なの」
「こんな曇り空じゃ見えないよ」
「見えるわ」
それから流れ星はひとつも流れなかった。然し乍ら僕と莉子にとっては瞬く星が降り注ぐ美しい夜だった。
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