ひどい雨

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~ひどい雨~  雨が降りそうだということは、今朝の空模様で十分に理解していたはずでした。しかし放送で聞いた天気予報はいつも正確でしたから、私は午後6時までに帰れば良いだけの話でした。  出掛けたいわけではありませんでしたが、餓死するまでがどうにも苦痛で、とうとう耐えきれずに外に飛び出た次第です。  けれどもその日は珍しく、雨は随分と早くから降り始めました。  時刻でいうと、午後4時くらいでしょうか。お日様は雲に隠れて姿を消してしまっていて。腕に熱さを感じて確認すると、水滴が肘まで伝っていたのです。降ってきた雨の通った部分は少し赤く腫れていました。それは即ち、決して見上げてはいけない類いの雨でした。それはまるで濃度の高い洗剤を希釈し損ねたような感じで、スパイクシューズを履いたサッカー選手が地面に深い跡をつくるくらいの威力も持っています。  私は少し、雨宿りすることにしました。天気予報が伝えていたように、これからこの雨が強くなるのならば、私は目的地にたどり着けなくなる気がしたのです。よく死にたいと呟くことはあったけれど、そんな日々とは裏腹に、私の防衛本能は真っ先に動いたのでした。
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