ひどい雨

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 …とは言いつつも、施設はどこもお休みですし、屋根のあるところも安全とは言いきれないこの頃ですから、私が向かえるのはたった一ヶ所だけでした。  赤い警察署の脇を抜け、ショッピングモールの駐車場前まで足早に向かうと、4面とも透明なガラスでデザインされた小さな箱が目に入りました。人が一人、横になって寝られるかどうかくらいのサイズの箱は、どことなく喫煙所に似ていました。因みになぜ私がそう思うことが出来たのかと言いますと、私は喫煙者を見たことはありませんが、ドアノブに羽虫が絡まった喫煙所は見たことがあるからです。  私はほとんど扉を壊すような勢いで箱に入りました。耐久度のない公共物を使うことはあまり推奨されていますが、今は気にしている余裕などありません。まだ、外よりはましなのですから。だって、私が唯一備え付けられた丸椅子に座った時、腕の皮膚と薄生地のワンピースは既にひどい有り様でしたから。
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