ひどい雨

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 ふと、私は幾つかの車が通りすぎた音で目が覚めました。息を潜めるのを忘れていましたが、この大雨ではガラスの箱の中身すら見えないのでしょう。私は後からやってくる激しい鼓動を聞いて、まだ生きているのだと改めて確信しました。車に乗っているのが人間かどうかもわからない時代です。貴方はいつも孤独で、だからこそ誰かに会いたいのではないか?そんなことを聞く奴はさぞかし位の高い人間なのでしょう。きっと、このご時世でも欠損したことのないような人間。守られてきた人間。  先端が冷えて変色した指先で目蓋を覆い隠すと、暫くは意味のない発声で心を落ち着かせました。  後から、あったかもしれない絶望がじわじわと襲ってきました。  「もう死にたい」  これは本音でした。全部終わりたかったのです。何もない町でも逐一全てに怯えるのが、本当に辛いのです。  しかし、ここで舌を噛みきるという選択肢はありませんでした。  精神的苦痛から来る頭痛が、私から冷静さを奪おうとしていました。  涙が幾つかこぼれました。とても辛かったのが印象的でした。
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