ひどい雨

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 やがて、その影はゆっくりとガラス伝いにくずおれて、そのまま動かなくなりました。  何度か強く扉を叩いても、反応はありませんでした。もしくは気付けなかったのです。  やがて私は安堵したと同時に興奮しているのに気がつきます。  心臓がうるさいのですが、これは先ほどの恐怖とは違いました。  危険そうな人が死んだ安堵?久しぶりに人と関われた喜び?もしくは、私が生きている、感動?なんだかどれにも当てはまるような気がしてなりませんでした。  結局私が生きたいことに変わりないのです。  それが私にとってはひどく馬鹿らしいことに思えて、仕方がなかったのです。  疲労が酷いのがわかりました。  椅子に座り直すのも面倒だったのです。  私はそのままガラスを背もたれにして、ゆっくり腰を下ろしました。  私を伝った不純物混じりの水滴が、地面からゆっくりと消えていくのをぼんやりと眺めていました。
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