海の怪物

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 正午を少し過ぎたあたり、新太郎(しんたろう)は同級生と帰っていた。明日から長い夏休みだ。旅行に出かけたり、近くで遊んだり、ゲームをしたり、遊び方は色々ある。何をしようか迷ってしまう。  一部の同級生と別れる時になった。一部の同級生はここで左に曲がるが、新太郎と一部の同級生はまっすぐ進む。 「じゃあね、バイバーイ」 「バイバーイ」  新太郎は一部の同級生と別れた。新太郎はのんびりと帰っていた。新太郎の住んでいる村は漁村で、ここに住んでいる人々のほとんどは漁師だ。この近くには港があり、ここに揚がる新鮮な海の幸は絶品だ。 「今日から夏休みかー」  同級生はいい気分だ。これから長い夏休みが始まるのだ。何をやろうか迷う。 「何をして楽しもうかな?」 「ゲームっしょ?」  新太郎はテレビゲームをするのが好きで、ほぼ1日中している事もあるという。 「そうだね」 「うん」  一緒に歩いている同級生と別れる所に来た。ここから自宅までは1人で帰る。 「じゃあ、バイバーイ」 「バイバーイ」  新太郎と同級生は別れた。新太郎は手を振っている。  新太郎はご機嫌だ。明日からの夏休み、ゲームをして自由に過ごそう。小学校での疲れがたまっているし。 「明日からが楽しみだなー」  と、新太郎は2人の主婦が立ち話をしているのが気になった。何を話しているんだろう。気になるな。 「ん?」 「明日は海に出ちゃ、だめよ」 「そうそう。怪物が出て、殺されるから」  新太郎はそれを聞いて、ハッと思った。いつも海に出ているのに、毎年特定の日に海に出ていないのだ。理由は、海の怪物が出るからと聞いている。それを新太郎は信じられなかった。  新太郎は帰り道で考えていた。こんなに言われているのだから、行ってみようじゃないか! 行って生還して、かっこいい所を見せてやるよ。  道の向こうには防波堤があり、その先には海が見える。今日も海は美しい。そこを時々、船が行き交っている。だけど明日は、誰も海に行かなくなるのか。  新太郎は家に帰ってきた。新太郎の家も漁師だ。 「ただいま」 「おかえりー」  新太郎はすぐに2階に向かった。いつもの光景だ。そう思い、母は見ていた。だが、新太郎は考え事をしていた。 「うーん・・・」  ベッドに仰向けになり、あの噂話を考えていた。あれはいったい、何だろう。自分の目で確かめてみたいな。きっと、みんな驚くんじゃないかな? 「あれは本当なのかな? 行ってみようじゃないの」  新太郎は明日、行ってみる事にした。もちろん家族には秘密だ。もしも言ったら、絶対に止められるだろう。家族はみんな、その事を知っていかせようとしないのだから。  次の早朝、新太郎は目を覚ました。家族はみんな寝ている。今日は漁に出ないのだ。家でじっとしていよう。起きるのは遅くてもいい。  新太郎は近くの海岸にやって来た。やはり、誰も人がいない。いつもだったら多くの人がいるのに、今日はいない。やはり海の怪物を恐れて誰も来ていないのだろう。とてもさみしいが、新太郎は全く気にしていない。 「誰もいないか・・・」  新太郎は疑問に思った。本当に出るんだろうか? 海は全くあれていない。疑い深い。  新太郎は海水パンツ一丁になり、泳ぎ始めた。静かな海に、新太郎の泳ぐ音がよく聞こえる。 「本当に出るのかな?」  だが、何かが出る気配は全くしない。その噂は嘘だったのかなと思ってしまう。 「出ないじゃん!」  油断していたその時、何かの気配を感じた。新太郎は振り向いたが、そこには何もいない。新太郎は首をかしげた。一体何だったんだろう。 「ん? 何だろう」  と、新太郎は右手に違和感を覚えた。手を見ると、牙を持っている。その牙は鋭い。一体何だろう。まさか、海の怪物の物じゃないかな? 「気のせいか・・・」  その時、新太郎の後ろに、大きな海蛇がやって来た。だが、新太郎は全く気にしていない。 「えっ!?」  新太郎は何かに気づき、振り向いた。そこには巨大な海蛇がいる。これが海の怪物? まさか、こっちに向かってくる? 早く逃げないと。 「うわぁぁぁぁぁぁ!」 「ギャオー!」  だが、巨大な海蛇は猛スピードで近づいてくる。とても逃げられない。 「助けて!誰か助けて!」  巨大な海蛇はあっという間に追いつき、新太郎に嚙み付いた。だが、誰も助けに来ない。誰も海に来ないのだ。 「ぎゃあああああ!」  新太郎は巨大な海蛇に食べられた。だが、誰も気づいていない。いまだに新太郎は行方不明のままだという。
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