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その夜、山崎は夢を見た。そこはどこか全くわからなかった。だが、どこかの田舎だ。とても賑わっている。一体どこだろう。山崎は首をかしげた。
「あれ? ここは?」
しばらく歩いていると、小学校が見えた。よく見ると、宇藤原小学校と書いてある。まさか、ここは昔の宇藤原だろうか?
「昔の宇藤原だ」
「こんなに賑わっていたんだね」
山崎は横を見た。そこには上田がいる。まさか、上田も夢の中に来たとは。だとすると、一緒にキャンプに来ている3人もいるのでは?
「ああ」
山崎は辺りを見渡した。だが、そこに鉄道の高架線や宇藤原駅はない。まだ鉄道が開通する前だと思われる。
「まだ宇藤原駅がない」
「本当だ」
まだ生まれていないからわからないけれど、宇藤原駅ができた頃には、もう集落は寂れていた。利用する人はほとんどいなかったという。だが、ここに住む人々にとっては重要な駅だった。
「もう駅ができる頃には、過疎化が進んでいたと聞いたんだが」
「開業するのが遅すぎたんだね」
「うん」
と、小学校のチャイムが流れ、子供たちが運動場にやって来た。閉校した時とは比べ物にならないほどの生徒がいる。こんなに多くの生徒がいたら、閉校なんてなかったのに。こんなに減ってしまって、寂しいな。こんな時代に生まれたかったな。
「こんなに多くの人が!」
「本当だ!」
山崎は彼らの姿を見て思った。この子たちは、この宇藤原小学校が閉校するなんて、想像できたんだろうか? 閉校を知った時、閉校式を見た時、どんな気持ちだったんだろう。
「この頃は閉校なんて考えられなかったんだね」
「うん」
反対側を見ると、キャンプ場が見える。キャンプ場は賑わっている。客が減少した今とは比べ物にならないほどだ。本当にここがあのキャンプ場だろうかと疑ってしまう。だが、これは真実だ。
「これがキャンプ場?」
「そうみたいだね」
上田は下を向いた。そんなキャンプ場も、もうすぐ閉鎖されてしまう。そしてまた、宇藤原の灯が消えてしまう。
「そこそこ多くの人がいたんだね」
「うん」
山崎はじっと見ていた。小学校も、キャンプ場もなくなってしまう。思い出の地は次から次へとなくなっていく。だけど、心の中では残り続ける。それでいいんだろうか? その思い出の地を、次の世代に残さなければならないのに、これでいいんだろうか?
「もうみんな、なくなっちゃうんだね」
「寂しいね」
そして、辺りが光に包まれた。山崎は目を覚ました。キャンプ場だ。どうしてこんな夢を見たんだろう。まさか、ここに住んできた人々が見せてくれたんだろうか?
「夢か・・・。こんなに賑わいがあったとは」
山崎は昨夜見た宇藤原の昔の姿と思い出した。こんなに寂れてしまうのは仕方ないけど、本当にいいんだろうか? 賑わいを残す事はできないんだろうか?
「もうあの頃の栄光は戻ってこない。だけど、栄光の記憶は残り続ける」
5人は朝食を食べている間も考えていた。この宇藤原の灯を消さないためには、何をすればいいんだろうか? だが、なかなか答えは見つからない。若い者はみんな、豊かさを求めて都会に行ってしまう。その中で、田舎は寂れて、いずれ消えてしまう。それは時代の流れなんだろうか?
5人はあっという間に食べ終わった。そろそろチェックアウトして、帰らないと。
「行こうか?」
「うん」
5人は荷物をまとめ始めた。もうこのキャンプ場に帰る事はないだろう。ここの風景をしっかりと目に焼き付けておこう。そして、いつまでも忘れないようにしよう。
5人は事務所にやって来た。事務所にはオーナーがいる。
「ありがとうございました」
5人はミニバンに乗り込んだ。もう帰る事のないキャンプ場、5人はじっと見ている。そして、なかなか出発しない。ここを離れるのが寂しいようだ。
「さようなら、キャンプ場」
山崎は車を走らせた。山崎は泣きそうだが、必死でこらえている。
「さようなら、宇藤原」
車は宇藤原の道を走っている。もう走る事がないかもしれない宇藤原の道。ここも記憶にしっかりと刻んでおこう。果たして宇藤原はあと何年、集落であり続けるんだろう。全くわからないけど、その時は刻一刻と迫っているはずだ。その時、僕たちは何歳になっているんだろう。そして宇藤原がなくなると、ここはどうなるんだろうか? ただの荒野に戻るんだろうか? それはまるで栄枯盛衰のようで、そうなるのは致し方ないんだろうか? そう思いつつ、5人は宇藤原を離れた。
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