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「志賀よ。お主に最終試験を言いわたす。」
とうとうここまで来たなと思う。24時間座禅を組みながら、式神を召喚するための呪文を唱え続けたり、妖怪1000匹休み無しで抹殺したり、思えば正式な陰陽師になるには過酷すぎることばかりだった。昼間は高校生としてだらだら、授業中も寝てばかりの優等生とは間反対の生活ぶりだったが、一人前の陰陽師を目指して真剣にやってきたと自負している。最終試験も乗り越えられるはずだ。
「最終試験は人の恋を式神を使い成就させよ。」
「は??じいさんぼけたか??」
「お主よ。ここで辞退してもよいのだぞ。」
あーこれはリアルだ。
「わかったよ。で?なぜこれが最終試験?」
「それを考えるのも試験じゃ。」
心の中で舌打ちを1万回ぐらい鳴らした。
「それって俺の式神の丸吉を使えってことよな。」
「別に式神ならなんでもよいぞ。」
「あーわかった。わかった。」
丸吉は幼少期からずっと使役してきた、良き相棒だが、少し調子に乗りすぎる所がある。
「じいさんよ。本当にこれが最終試験よな。」
「ふん。わしは嘘はつかんよ。」
うそつけ。この前、一万円借したのに、わしは借りてないの一点張りだったくせに。
「この最終試験を突破すれば、正式に陰陽師を名乗れるから頑張れよ。」
「わかってるわ。」
じいさんの前では、強がってはいたが、内心不安だらけである。
人の恋を成就せよか。やっぱり通っている高校の人達がターゲットにはなるのだろうが、残念ながら友達が少ない状況で、この試験は難易度が高い。
「丸吉出てこい。」
「おっ!?おやつくれるのか。」
丸吉は俗に言う狸の式神である。人に化けるのが得意であり、人間からも見える姿に変身可能である。
「そうだな。今から俺が言う通りにすれば、おやつやるぞ。」
「で何よ。」
「俺の学校に転校生として来い。」
「えっ。別にいいけど人間の姿でずっといるのは禁止だったじゃん。」
「大事な事情があるからな。」
「ふーん大事な事情か。僕には関係なさそうだしどうでもいい。やった。女の子と遊べるぞ。」
「何か少しでも迷惑な行動をとってみろよ。そのときはお前を封印するからな。」
「もーこれだからチェリーは。子供だね~」
「ちっうるせーわ。」
丸吉は人間に友好的な式神だが、一番の理由としては人間の女性が好きらしい。式神としての戦闘能力は高いが、扱いが難しいところがある。」
「はー。今回は憂鬱だな。」
「なんか久しぶりに旬一が悩んでるの見た気がする。普段ロボットみたに感情ないのに。」
「いろいろと人間の世界もめんだくさいんだよ。」
「まー僕には関係ないもんねー。」
田んぼ近くのあぜ道を自転車で漕ぎながら、じめじめとした空気に纏われて、明日の小テストの事を対策を考えることにした。
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