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 「今日から転校生が来たので紹介します。丸吉 大河君です。みなさん仲良くしてやってください。」  「丸吉だ。みんな我のことを大事に扱えよ。丁重に扱わねば死がおとずれるぞ。」  あー。これは第一印象最悪の展開。転校生として潜入させる作戦は、だめだったかのかと、すぐに作戦失敗だと判断した。  漫画とかだとこういう展開はイケメンだとか、美人な人が来てとても盛り上がるのだけど、そんな世界は虚構でしかない。クラスの期待をある意味大きく裏切ってはいるが。  クラス中のざわつきが止まることはなく、女子の冷ややかな視線、男子の面白いおもちゃをみつけたかのようなテンションはクラスの雰囲気にカオスをもたらしている。 「ねー志賀よ。あいつ絶対おもしろいやつだよな。」 隣の席にいる、学校の中で数少ない友達である新藤がいつもより声のトーンが高い肥で話しかけてきた。 「面白いというか、あいつ俺の親戚だよ。」 「えー!志賀の親戚なの。お前と正反対じゃん。」 「親戚なのは関係ねーよ。あいつは昔から親戚の中でも頭のおかしいやつだったからな。」  一応、丸吉が来る前にクラスのみんなに俺の親戚であると伝えられていた。そのときは今ままで話したこともない人からも質問をされて、皆の転校生への期待値は高いことだけはわかった。期待値を下げるキャンペーンを勝手にやってはいたが、あまり意味はなかったと実感した。  それでも、丸吉を転校生として潜入させたのは、試験を突破させるには絶対必要であると感じている。 「志賀よ。あの転校生を見ても木本さんは顔色ひとつ変えずに、じっと転校生の顔を見てたんだよな。やっぱその動じない精神も美しいよな。」 「おまえ。好きな人から洗脳されてきたら、すっかり騙されそうだな。結婚詐欺とか気をつけろよ。」 「は?木本さんはそんな人を騙そうとか、悪い所はひとつもない透明で美しい心をもった人なんです。」 「そうか、じゃー転校生見てどう思ったか、聞いてこいよ。」 「そんなの聞かなくても分かるよ。」 「はいはい。話しかける度胸は相変わらずないですね。」 「うるせー。明日には聞いてやるよ。」 「はいはい。」  新藤は木本鈴華のことがとても気になってしかたないらしい。というかおそらく彼女の事が好きである。  最終試験の内容を聞かされたあと、まっさきに新藤の顔が浮かんだ。正直、成功確率は低いだろうが、やってやるしかないと少しはこの最終試験に燃えている。  「はー木本さん。少しはこっちを振り向いてくれないかな~。」 少しは燃えていた心が、そっとフェードアウトしていった。
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