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 「鈴華ー。最近、大丈夫?あの転校生にずっと付きまとわれていない。」  「大丈夫だよ。適当にあしらえばいいし。」  あしらっているより、無視している。  「ほんとに?私だったら怒っているけどな。」  「えー早苗が?想像つかないわ。ちょっと見てみたかったかも。」  「もー鈴華はすぐに人の事を馬鹿にするよね。」  普段、品の良いお嬢さんの早苗が怒ることがあるのかと想像なんて全然つかない。けどそんな早苗がとても心配してくれる今の状況はひどいのかもしれない。  「部活帰り、いつも絡まれているよね。」  「そーだな。あいつのこと、無視してはいるけど、心折れずに話しかけてくるから逆に尊敬してきたわ。」  「鈴華ってあいつになんか、べたべた絡まれるようなことしたの?」  「いや、してないよ。」  してないとは言ったのはいいものの、実は心あたりはある。けれど確信はまだ持てない。  「あっ、あとついでに、新藤にもなんか話しかけられていたじゃん。」  「うーん。そうだったけ。ぼそぼそ言っていて何しゃべっているかわかんないからいつも無視してるよ。」  「最初から聞く気ないだけでしょ。」  「うん、まあね。」  新藤は、私と何かおしゃべりしたいんだろうなっていう感じは伝わってはくる。その感情に悪意は込められていないような気がする。  けれど、丸吉と新藤が私に寄ってくるときに、一人すこし離れた所から、私の事を見てくる男がいる。あいつは同じクラスメイトの志賀だ。私は志賀だけは名前をはっきりと覚えている。  「あと、鈴華さー。最近、志賀君も鈴華のこと見てるの知ってる?」  「あー知ってるよ。新藤とか転校生と仲いいからじゃない。」  「もしかして新藤君が悪さしないように見守っているのかな。」   「少し意味は違うような気はするけど。志賀君は変なやつではないと思うよ。」  「鈴華が人の名前、ちゃんと覚えているのびっくりなんやけど。もしかして志賀に関しては何か印象に残るような事があったの。」  「そういう訳ではないけど、あいつとは昔から少しだけ腐れ縁があるんよ。」  「え!そうなの?どういう関係?」  「うーん、ほんと昔から知ってるだけだよ。」  志賀は私の事は知らないと思う。というより志賀は私と会ったことがあるのを覚えていないだけが正解か。  「ふーん。なんだか面白そうな予感。」  「はー。早苗は本当に頭の中、お花畑ね。」  「鈴華が珍しい感じだから面白いだけだよ。」  「もー志賀には何もするなよ。」  「はいはい。新藤君の対応で忙しいもんね。」  「ちげーわ。お嬢様は早く帰りな。」  「私知ってるよ。実は鈴華もお嬢様なこと。」  「違いますー。はい。またね。」  「あっ逃げた。まーいいやまたね。」 なんだかとんでもなくめんどくさい学校生活になりそうな予感がしたので、悪いことは起らないように、そっとお守りにお願いした。  
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