6 芸術という架け橋

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「そう。フランス革命があって、ロココ調の時代が終わって……っていう頃の作品たちみたい」  俺は壁に掛けられた絵画を眺めながら感嘆の息を漏らした。歴史の授業で習った知識はある程度頭に入っているものの、こうして実際に目にするとまた違う印象を受けるものだ。 「なんだっけな。教会や王家のプロパガンダで写実的な系統の作品が多く発表されたって時期か」 「え、そうなんだ?」  俺の言葉に目を大きく開いた若葉は、驚いた様子で俺の顔を覗き込んだ。 「やっぱり雪也くん、世界史詳しいねぇ。私、その辺の背景は知らなかった。いつも、こう……構図とか色の表現とか、描き方にしか目が行かなくって」 「あ……いや……」  彼女の視点は、どうやら俺が思っているよりもそれらを生み出す技術に向いているらしい。若葉からキラキラした視線を向けられるのが擽ったく感じて、俺は反射的に顔を逸らす。彼女の期待に応えられるほどの知識を自分が持ち合わせているわけでもないし、いささか気恥ずかしくなってしまった。 「まぁ、俺はそういう技法とかが全然わかんねぇから、あれだけどな」  照れ隠しなのか、自分でもよくわからない返事になってしまった気がする。ただ、俺の答えに満足したのか、若葉は嬉しそうに微笑んでいた。  常設展で一通りの作品を見た後、俺たちは企画展へと向かった。ここでは現代に生きる若手アーティストたちが手がけた様々なジャンルの作品が展示されているようだった。 「あ、これ……」  若葉はとある絵画の前で足を止めた。それは淡い色彩で青いネモフィラが描かれた油彩画だった。花弁の質感や筆致から繊細さが伝わってくるような絵だ。俺はその絵をまじまじと見つめながら口を開く。 「なんか……すげぇリアルだな」 「うん! この絵もそうだけど、この作家さんの作品ってどれも色使いがすごく綺麗なんだよね」
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