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 セックスを終えて、ユズはアキに抱きかかえられて風呂に入れられ、アキもまた入浴していた。  程よくあたためられたお湯をかけられ、たっぷりの泡で白く汚れた肌を洗い流してくれるアキは、いつもと変わりない、ユズにとことん甘くやさしい恋人の顔だ。 「ごめんね、ユズ」  湯船に前後に重なるよう浸かっていると、アキがぽつりと呟いた。背後から抱きしめられて顔は見えないけれど、きっといま彼は少し泣きそうな子どもの様な顔をしている気がする。  だからユズは小さく笑い、その肩にもたげられたアキの濡れた頭を撫でてやった。 「ん……大丈夫だよ。アキくんが、俺のこと好きなのは、解ってるから」 「でもさ、俺、すごく意地悪な言い方してたし、ユズだって嫌だったから馬越くんたちのとこ行ってたんでしょう?」 「……まあ、それはもう、お互い様だよ」  苦笑してユズが返すと、アキはますますぎゅっと強く抱きしめ、「……ホントに、ごめんね」と、泣きそうな濡れた声で呟く。その声はユズにとって抗えない痛みを伴うもので、余計に伝えたかったことを呑み込ませていく。  こんな声でこんな言葉を、アキくんから言わせたかったわけじゃないのに……そんな罪悪感が胸の奥ににじみ、うっかりまた泣きそうになってしまう。 「俺、明日から涼真との接し方気を付けるよ。ユズがイヤな想いするようなこと、しないようにする」 「……ありがとう。でも、仕事に支障出ない?」  自分のせいでアキの仕事面での支障が出てしまっては元も子もない。そうまでして折角できた後輩との関係を悪くしてほしくない。そういうつもりでユズはアキの方を振り返ったのだけれど、アキは先程までとは打って変わって俄然やる気を出した顔をしてユズを見ている。 「大丈夫、俺、こう見ても十年以上仕事してるから」  そうまで言われてしまうと、アキの仕事の詳細を知らないユズはそれ以上口を挟めない。だから小さく笑んでアキの頬に口付けて微笑んだ。 「うん、ありがとう、アキくん」  ユズのキスと微笑みにアキもまた微笑み、キスを返してくる。一見すると仲直りした甘いふたりに見える光景だ。  指先までアキに愛されていることを感じながらも、ユズはやはり胸の奥の方で言えないまま塞がれてしまった言葉の気配を感じていたが、あえて黙殺する。  いまは少しだけ、こうしていたい。明日また、改めて言えばいいよね――そんな誘惑のような甘さに屈服するように、ユズはまたアキの熱い唇を受け止めるのだった。
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