*12-2

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 馴染みの部屋につき、灯りを点けながらアキは風呂の準備をしに風呂場へ向かう。ユズは、ぼんやりと寝室とダイニングとの間のスペースに佇んでいた。  遠くアキが風呂の準備をする音を聞きながら、その音が記憶のかなたの幼い頃の自分の景色にリンクしていく。まだ妹も生まれていなかった頃、若かりし父と風呂に入り、色々なおとぎ話を聞かせてもらったことを思い出したのだ。  西洋の童話や中国の寓話など話は多岐にわたり、同じ内容はひとつもなかったと記憶している。いまにして思えば、父とのあの時間があったからこそ、ユズは作家として物語を紡いでいく素地ができたのかもしれない。大きくなれば本をたくさん買い与えられたので、いままでそちらの影響かと思っていたが、どうやら元をたどれば父との時間が大きいようだ。  その時間は、もう二度とつむげない。突き付けられた現実はあまりに残酷だが、ゆるぎない事実であり、ユズはそれをいま受け止めようとしていた。 「ユズー、風呂できた……よ……ユズ? 大丈夫?」  ぼんやりとたたずむユズの横顔がぼんやりしていたからか、アキが心配そうに声をかける。 「……アキくん。俺、ちゃんと父さんにありがとうって言えたよね」  風呂に誘いに来たアキの方を振り返りながら、ユズが崩れてしまいそうな笑顔で訊ねると、アキもまたぐっと何かを堪える様な顔をし、それからユズに歩み寄って抱きしめる。 「言えたよ、ちゃんと。お父さん、すごく嬉しそうだったじゃん」 「うん……そう、思っていいよね……」  ユズが呟くと、アキがぎゅっと強く抱きしめ、「もちろん! 胸張っていいよ!」と語気強めに答える。その声がユズの薄い胸に響いて心地よく、今度は嬉しい想いのこもった涙がこぼれる。  それからそっとユズもアキを抱きしめ、深呼吸するように告げた。 「ありがとう、アキくん。俺、本当にアキくんを好きになれて、愛し合えて、しあわせだよ」  ユズの言葉にアキの抱擁が少し緩み、ふたりは向かい合う。見つめながら段々と距離がなくなっていき、やがてふたりは重なる。  重なった唇を離し、数センチのインターバルを置いてアキがもう一度軽くユズに口付け、ふわりと笑う。 「俺も、同じこと考えてた。ユズに出会えて、好きになれて、愛し合えてて、すごくしあわせだよ」  ふたりくすりと笑い合い、またキスをして、そのまま深く絡み始める。くたびれた肌に服地の上から触れながら、互いの感度をあげていく。  ユズのシャツのボタンをもどかしそうにはずしつつ、アキはユズの唇から喉へと舌先を移動させていく。濡れた痕がついて、露わになっていく肌へと一直線に降りて味わっているようだ。 「ン、ッは、あ……アキ……陽人……」 「柚樹……ここ、もう濡れてるよ」 「ッや、あぅ!」  直立していたユズに対して、アキは段々と膝をついていき、その内に屈みこんでユズの下腹部のあたりに辿り着いた。すると目の前に先走りが染みたユズの下着に行き当たり、そんなことを言われてしまう。  ユズは隠すように膝を折って自分も屈もうとするが、アキが抱き着いていてそれが叶わない。アキは、下着越しにユズの熱い花芯を目覚めさせようとするかのように口付けている。 「ッや、ヤダ、アキく……ッや、ダメ、出ちゃ、うぅ……!」  粗相をするようで恥ずかしくて仕方ないユズは、子どものようにいやいやと首を振って拒んでアキの肩を押し離してくる。  離されたアキは名残惜しそうにユズを見上げるも、まだ何か企んでいるのか、嫣然と微笑んで立ち上がり、ユズを抱きしめる。 「ごめん、ユズがかわいいから意地悪しちゃった……風呂、行く?」 「ン……」 「それとも、もう少し?」  中途半端に目覚めさせられた花芯はゆったりと屹立していて、下着越しでも存在を誇示しているのがわかる。触れてくれと言わんばかりに蜜をこぼすそこを、指先で撫でられながらアキに囁かれ、ユズはたまらずに溜め息交じりに乞うてしまう。 「……もう少し、シて、陽人」  欲情に潤んだユズの眼差しにアキの喉がごくりとなり、耐えかねたように喰らいつくようなキスをされる。舌が挿し込まれ、上あごをなぞられ、たちまちにユズの力が抜けていく。  崩れそうになったユズをアキが抱き留め、クズクズと乱れたユズの下着をずり下げて屹立を露わにし、扱き始めた。 「ン、ンふ、ンぅ! ん、ンぅ!」 「ユズ、いっぱい溢してるね……ちゃんと言えたから、いっぱい気持ち良くしてあげる」 「あ、あぁ、あ、ン、っはぁ、あぁ、アキ、陽人……ッや、あ、らめ、らめ、出ちゃ、あぁ……――ッ!」  アキの手の中でユズの屹立が熱を持ち硬度を増していくのを煽るように、アキの手淫が続く。膝を震わせて快感を貪るユズは、自然と自ら腰をアキに押し付けている。  その内に手の中の屹立がぶるりと震え、脈打ちながら白濁をあふれさせていく。白く染まった指先を、アキはうっとりと見つめている。  吐き出して呼吸を乱しているユズの目はとろりと甘く、それは熱いアキの腕の中でますます蕩けていく。 「ごめ……アキくん……手……」 「いいよ、ユズが気持ち良くなったなら」  でもこれでいよいよ風呂に入らなきゃだな、とアキがくすりと笑うと、ユズは恥ずかしそうにアキの胸元をはたく。そんな仕草さえ愛しいのか、アキはまたユズにキスをし、音を立てて首筋に痕をつける。甘い痛みを感じながら刻まれた赤い痕に指を這わせ、ユズはゆらりと微笑む。その艶やかな表情に、アキは雄芯の熱が昂っていくのを感じた。
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