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第14話 修行龍と指導龍
紫龍と文字通り一体となってから、身体だけでなく生活や感情面でも変化を感じている水七子。
周りの人から親切にされたり、クジが当たったりうれしいことが増えた。
自然とよく笑うようになり、その度にお腹の中がぽかぽかし、
あっ、これは紫龍も喜んでいるんだ
と感じるようになった。
どうやら人間が喜ぶことはどういうことか、修行龍は学んでいるらしい(と虹龍が教えてくれた)
指導龍となってから、青龍ほどではないが、虹龍はよく喋るようになった。
それは紫龍に対してだけでなく、水七子に対しても。
まるで竜付き人をも指導しているよう。
電車の中でつい足がだらけていると
(竜付き人たるもの上品でいなさいっ)
と姿勢を正され、
職場でも堂々と明るく振る舞うよう
ゲキを飛ばされる。
雪恵にその話をすると
「いいなー、私も銀ちゃんにそんなふうに言ってもらいたいのに、やんわりとしか教育してくれないもん。お母さんもそうだったからなぁ」
と亡き母を偲んでいる。
「人間も竜も、教え方は千差万別。優しく指導する者もあれば、スパルタ教育もある。コウちゃんがこんなに体育会系だとは思わなかったけどw」
紫龍は虹龍に手厳しくされても、へこたれず知識と経験を吸収している。
「それはあれね。コウちゃんは厳しさの中に愛があるから、ついていこうと思えるわけよ」
雪恵の解説に、なるほど、確かにそうだわと思う。
「店長はどうだろう?一見優しそうに見えるけど」
「それは微妙なところかなぁ。風浦さんは特別な人だと思ってるから厳しく言わないけれど、周りの人には結構冷たい言い方や態度もとるから…そういうところついていけないって思ってる人も多いみたいよ」
「えっ、なんで特別??」
「そりゃあ竜付き人の占い師で、青龍の様子も店長のこともいろいろみえちゃうんだもん。普通の人より敬うわけよ」
「そんなもんですか〜」
(我も敬え〜)
「↑とコウちゃんも言ってます」
「かっこいい!コウちゃん。なんかキャラ変わったねw」
「元々こういうキャラなんだけど、人見知りならぬ竜見知りするからおとなしかったみたい」
「竜見知りとかあるんだw 銀ちゃんはなさそうだね」
ほっこり
銀龍はいつも穏やかに微笑んでいる。
その夜
水七子は夢の中で、虹龍と話をした。
(私は龍の世界の中でも身分の高い、龍の王族にあたる者なり。それゆえ指導龍の役目を仰せつかったのだろう。水七子よ、そなたは私がついている竜付き人なのだから、それなりの振る舞いをなさい。慣れぬ場所でもおどおどすることなく、背筋を伸ばし、堂々としているのです。ひとりでも人目を気にすることなく、その時々を楽しみなさい。それが竜女というものですよ)
(竜女…?)
(聞いたことはあるであろう。スピリチュアル系の特集などでもよく取り上げられているしな)
(コウちゃん…情報通なのね)
(まぁ…人間界のことを知ることも大事なのでな)
コホッ
照れ隠し虹龍
ネットや雑誌で竜の話題を探す虹龍
想像するとかわいらしいw
(そなたはこれから、竜女を志していきなさい。あなたの成長とともに、紫龍の徳も高まり、立派な竜となるのです。竜付き人はまだ序の口、竜がついていれば誰でも竜女、竜人というわけではなく、より己を磨くことで、そう呼ばれるのです)
虹龍の傍らには、紫龍がいた。
(わかりました、コウちゃんのように気品ある、内面から輝く竜女を目指します。紫龍のためにも)
そう告げると、虹龍はうれしそうにキラキラと光りを放っていた。
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