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第16話 竜のしるし
思いがけず長野とおやつタイムとなった水七子。
この店長いつもマスクをしていたので、素顔を見る機会がなかったのだが。
お菓子を食べる際は、さすがにマスクをずらす。
その時に気づいた。
(えっ、竜みたい…!?)
色白なのだが顔の頬のあたりが肌荒れのような状態で、それがまるで竜の肌のよう。
(これはもしかして…)
(竜印、竜のしるし。この男も竜に認められし者ということ)
虹龍は若干不服そう。
余程長野を好ましく思っていないようで、私は認めないぞと言わんがばかりに睨みつける。
「いただきまーす」
モグモグ
クッキーを口に入れると、気持ちがほっと落ち着く。
「あー、力がみなぎってきたー」
「それはよかった」
「あ、散歩に行ってた青龍さんも戻ってきた。お菓子の誘惑につられたのかもしれませんね」
「ははっ、僕と一緒でお菓子好きなのかな」
「竜と竜付き人は一心同体ですからね」
今日は雪恵が休みなので銀龍がいないのが残念だ。
竜3頭と人間ふたりのカフェタイム。
モグモグ
モグモグ
水七子は遠慮なくパクパク食べる。
紫龍のおかげで他人の目が気にならなくなり、自由に振る舞える。
竜の力は偉大だ。
みなぎる自信、
湧き上がる誇り。
今の自分が、
自分でいいんだと思える。
自分らしく生きる力を
与えてくれるのが竜。
(ワシは甘いもんより塩気のあるもんが好みじゃがのう)
「店長、青龍さんはしょっぱいものが好きみたいです」
「そうなんだ!じゃあ塩せんべいもこれから用意しないとね」
モグモグ
モグモグ
(塩分も糖分も摂りすぎは身体によくないわよ)
虹龍の言葉に耳を貸さず、青龍も長野もおやつを食べてご満悦。
(なんか憎めないキャラね。青龍さんも、店長も)
竜より与えられたしるしを持つ者同士、不思議なシンパシーを感じる水七子だった。
しかし
虹龍が言う
『ダメ男製造機』
という言葉がよみがえる。
まだよく知らない。
青龍のことも
長野のことも
(だけど、コウちゃんがそこまで言うなら、この人何かあるのかしら)
古式ゆかしき青龍がつく竜付き人。
気になるね、
気になっちゃうよ、やっぱり。
それに、竜のしるしまで持つなんて。
長野に対して、
興味がムクムク湧いてくる。
(やめたほうがいいのに…)
虹龍の言葉も、耳に入らないくらいに
好奇心が勝るのだった。
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