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第18話 見なかったことに
見て見ぬふり
世の中には、こんな便利な風習がある。
だって、絶対そこにいるはずないんだもん。
謎の従業員も、おばあさんも。
事務所の角は電子機器が集まっており、その電磁波も何かしら影響している様に思われた。
これは…
いつも開いているわけじゃない。
負の感情が集結してこのエリアに溜まり、
共鳴した闇のエネルギーが引き金となり
異世界と繋がり、
その世界の住人がワープしてきている。
意識を集中させてみると、
そう判明した。
一番の原因は…
ヤ マ イ シ
オ マ エ カ !
オーラも視える水七子、
山石の身体から黒い影が隅っこに流れていくのが感じとれた。
水七子は静かな怒りを無表情の水面下で治めた。
どうすればいい?
この難局を
虹龍はやれやれ、と匙を投げている模様。
(店長も青龍もいないし…かといってこれを放置していたらどんどん異形のものが流れてきて、感受性の強い人は心身に影響が出るはず)
最近従業員の中で心身の不調で休む者が多く、てっきり夏バテかまだ新しい職場ゆえ、慣れぬ場所でのストレスと思われていたが…
本来なら今すぐ事務所を浄化するために、植物を置いたり席替えや家具の配置を変えたりしたい。
しかし店長の許可なくする事もためらわれるし…
それに事務所内でこの話をして、他の人を不用意に怖がらせるわけにもいかない。
それで仕事に差し支えたら大問題で、せっかく入社できたのにクビになりかねない。
そんなわけで水七子がとった作戦は
『見なかったことに』
知らぬ存ぜずを通そうと思ったわけで。
(まぁいい。私そんなに事務所にいないし)
基本あまり積極的に人と関わろうとしない虹龍は、あえて何も言わず。
静かに様子見といったところか。
紫龍は…
何か思うように、そのブラックホールをじっと見つめている。
雪恵にもこれ以上怖がらせてはいけないと思い、詳細は何も話さなかった。
(せめてこの場所を清浄にするために、清掃をしよう)
これにはきれい好きな虹龍も大喜び。
(汚い場所にはなおさら邪気が溜まる。この機会に徹底的に清めるのじゃ。青龍も喜ぶであろう)
あれ??
(コウちゃん、青龍さんのこと嫌じゃなかったの??)
(…別にそこまで嫌ってはおらん。ただタイプが違い過ぎて、どう接したらよいか考えていただけで…)
なるほど
ツンデレか
恥ずかしがる虹龍
(わかった、今日のことは聞かなかったことにしておくから)
青龍を意識し、実はツンデレな態度をとっていた虹龍。
見ているようで、みえていないのが心ってもんで。
(青龍はおじいちゃんっぽいけど、コウちゃんは性別不明だからな…)
(竜は基本性別もない。天使だって両性具有体なのだ。あの青龍や銀龍は人間の影響を受けてるから、ハッキリじいさんや母的であって稀なのだ)
(あっ、そういうことっ゙)
心の内を悟られて焦る。
竜のことを考えていると、いつも側にいる虹龍や紫龍に通じるようで。
それにしても
人間の負のパワーがこんなにも強いとは。
マイナスの感情、それは誰にでもある。
不満や文句を言いたいこともあるだろう。
特定の誰かを嫌ったり、時には恨むことだってある。
けれど
そんな真っ黒いものに心を支配されてしまったら
知らずしらずこの世の者ではない者たちを引き寄せて
心身にも悪影響させてしまうなんて。
恐ろしくて、思わず身震いする。
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