第19話 紫龍の成長

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第19話 紫龍の成長

数日後。 事務所の異変を伝えたいのに、こんな時に限って店長長野は不在続き。 「なんか売上伸ばすために新規開拓にまわってるらしいよ。ほら、この前本社からいろいろ言われてたじゃない。来月末までに目標達成できなかったら、異動か降格っていう話も出てるみたいで」 相変わらず雪恵の情報網は早い。 「い、異動?? 青龍さんいなくなっちゃうんですか〜??」 そんなのさみしい せっかくここには竜が集い、竜付き人仲間ができたのに 業績不振の原因は、事務所の異変も関係している。 あの霊界のブラックホールに一番近い席は店長の席。 青龍さんの力のおかげであの人は難を逃れているものの、多少なりともマイナスの影響は出る。 根本的に引き金になった山石さんが負の波動を出すのをやめてくれたらいいんだけど、 人の性格なんてそう簡単には変わらないし… 悶々と、思い悩む水七子。 すると 体内から紫龍がスッと、出てきた。 おや? 紫龍は事務所の片隅に向かった。 例の場所だ。 すぐ近くでまた山石が暗い顔でブツブツ言っている。 やばい 霊道が開く。 ゾクッ 寒気がする。 とそこへ… スゥーーーーーーー……… ブハーーーーーーーーーーー!! まばゆいばかりの光とともに、 紫龍が神々しい何かを 霊道ブラックホールに向けて吐き出した。 (えっ??) 光は闇を包み、そこにあった入口を完全に消してしまった。 (どういうこと??) (水七子さんが困っていたので…助けたくて) (わぁ、紫龍がしゃべった!?) まだ若い紫龍は人間の言葉を知らないようで、ずっと話すことはなかったのだ。 (やっと…少し言葉をおぼえました。エヘッ) 照れ笑いがかわいい。 紫龍は話を続けた。 (私に課せられた使命は…人を助け、人の役にたつこと。もちろん、竜を信じる心美しい人に対して、ですが…。水七子さんが喜んだり、うれしくなることをすると、私は成長できるのです) (そういうことか!) 竜と竜付き人は一心同体だから。 (邪悪の吹き溜まりは、封印しました。これで元凶の人物が何を思おうと、異形のものが出てくることはないし、付近の人々に悪影響を与えることもないでしょう) (よかった…ありがとう紫龍) ぽわん ひと回り紫龍は大きくなり、精悍な顔つきになっていた。 (凛々しい紫龍、かっこいいな) 雪恵が完全に竜をみえるようになったらきっと、惚れ惚れするだろう。 そんな紫龍の成長を、虹龍は誇らしげに見つめていた。
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