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第3話 なんとなく、の意味
なんとなく
日常で度々現れるこの感情。
特別な理由がなくても、
なんとなくそこに行きたくなった。
なんとなくこっちを選ぼうと思った。
それは実は、
あなたを見守る竜が、
それがいいよと
教えているサインかもしれません。
水七子は新しい仕事を探していた。
転職情報サイトとにらめっこしながら、
気持ちがさまよう日々。
わたしは何をしたいんだろう…
自分がどう生きていきたいのかが、
わからなくなっていた。
やりたい仕事があれば、仕事探しは簡単だ。
例えば飲食業希望なら職種を飲食に印を入れ、
あとはアルバイトなのか正社員なのか
働きたい場所と条件を入力し
検索を押せばネットでいくらでも仕事は出てくる。
しかし
何がやりたいかが不透明だと、
まず検索すらできない。
特にやりたい仕事がなくても、
土日休みたいとか
これだけは譲れないという条件があれば
逆に消去法で絞れる。
それも特にない。
ちゅーぶらりん
求めるものがなさすぎて
前に進めない。
前職のブラック企業でパワハラもあったため
尚更慎重になってしまう。
求人広告の上でならいくらでも良く書ける。
自分に合った良いところを、見極めるのは難しい。
けれど
いつまでも迷っていては、
無収入のままでは
生活も先ゆかない。
不安と
焦りが交差する。
実をいうと彼女、
その類まれなる能力をつかい
占い師として占いの仕事もしていた。
だけどそれだけでやっていけるほどの収入ではない。
それに
やりたい仕事と、
できる仕事はまた違う。
適正や、資格の問題もある。
暗中模索している中、
妙に気になる求人広告があった。
「園芸店か…」
一般的な花屋ではなく、切花や野菜苗、観葉植物などを出荷、販売する卸売店。
妙に気になったのは、元々植物が好きなのもあるが、求人募集の言葉に惹かれてのことだった。
その文面は通り一遍の固い感じじゃなく、
書き手の気持ちが伝わる手紙のような人間味あふれるやさしい言葉だったから。
顔は見えないけれど、相手の人柄が感じられた。
慎重に慎重を重ね、何度も迷った。
けれどそれは本当にもう
なんとなく、で。
何日たっても気になって仕方ない。
思いきって、水七子はポチッと、
応募した。
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