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第5話 銀龍との出会い
面接が終わり次回入社手続きなどの日にちを決め、その日は事務所をあとにした。
「店内自由に見てもらっていいですよ」
店長の言葉にあまえさせていただき、敷地内を拝見する。
(緑がいっぱい…うれしいねコウちゃん♪)
コクッ
虹龍もうなずく。
竜は自然を愛し、自然と共に暮らす生き物だ。
滝や山、空、岩場、自然界のあらゆる場所にも自然龍がいたりする。
竜を感じたい、竜とふれあいたい方はぜひ美しい自然の場所へどうぞ。
ガーデニングの展示場所もあり、日本庭園のサンプリングもされていた。
滝、池、緑、岩。
竜が好むものがまとまっている。
(将来こんな庭のある家に住みたいわねぇ…)
そんなことを考えていると…
(ん?)
水辺に、誰かいる?
(あれは…銀龍??)
水しぶきと共にキラキラ光る銀の鱗の竜が、
なんとも気持ち良さそうに…
水浴びをしている。
その姿は
泉で水浴びするトラのように
なんだか愛らしい。
チャプチャプ
フフ〜ン♪
鼻歌まで歌い、ごきげんだ。
これには虹龍も
フッ
と思わず笑う。
(あの銀龍は…ここの従業員誰かについている竜なのだろうか)
そう思わせるほど、妙に人慣れしている
どこか人間味のある竜だった。
正体はすぐに判明した。
「新山雪恵(にいやまゆきえ)です、よろしくね」
初出勤の日。指導係として紹介された先輩。
細身で色白で品があり、どこかあの銀龍と似た雰囲気がある。
彼女を見守るようについているのが、先日見かけた銀龍だった。
「銀龍…」
「えっ?」
思わず出た言葉に、雪恵がすかさず反応した。
「もしかして…風浦さんって何か見える人??」
いきなりド直球の質問に驚くも、包み隠さず水七子は
「はい、いろいろ…」
と答えた。
竜付き人は、竜に認められた心の美しい人。
自分の素性を打ち明けても良いと判断したのだ。
過去、自分が他の人には見えないような、霊魂や妖かし、オーラ、前世、未来…
不思議な世界が見えると不用意に告げると、
気味悪がれたり、変な噂を広められたりすることもあった。
そのため、今ではできるだけ素性は自分から言わないが、今回のように尋ねられたり、この人なら大丈夫、と感じた場合は答えるようにしている。
予想通り、雪恵の反応は肯定的なものだった。
「えっ!?そうなの?? すごいすごいっ。私スピリチュアル系大好きなんだけどそういう力全くなくて。最近は竜の話が大好きで!YouTubeとかで毎晩スピ系動画見てるの!ねぇ、私に竜ついてないかなぁ??こんなに竜大好きなのは何か理由があると思うのよねー」
食いつきが、すごい。
好奇心に満ち溢れた瞳で、あれこれ質問してくる。
「あっ、いけない。仕事中だもんね、まずは鉢物のお世話から教えていくね。簡単なことから」
水やり用の水場の場所を教わり、一緒に散水していく。
緑の葉が生き生きとしてくる。
「さっきの話なんですけど…新山さんには竜ついてますよ。銀色の龍。とても穏やかで優しい、女性的な竜。この前私面接に来た日、日本庭園の滝下の池で水浴びしてました」
「マジですか!? 私に!? ほんとうれしいー!! っていうかいくら最近暑かったからって、造園の池で水浴びなんてかわいすぎるんですケドwww」
大ウケ
「私も驚きです。まさか同じ職場で竜付き人3人も揃うなんて。あっ、私もね、竜ついてるんです。虹色の虹龍なので、コウちゃんって呼んでます」
「コウちゃん!かわいいですねー。じゃあ私は銀ちゃんって呼ぼうかな」
「銀ちゃん♪すてきですね。銀ちゃんもうれしそうです」
「いいなー、風浦さんは見えるんですよね。でも3人ってことはもうひとりは…誰?」
「店長さんですね。この前面接でお会いした時驚きました。金色の目をした青龍です。かなり昔から存在しているので、古風な話し方をします。竜にしては珍しく、おしゃべりな方です」
「えー、店長?? そうなんだ~、あの人なかなかのやり手だから、確かに竜付きっぽい!」
初対面で、話が弾む。
「うちのコウちゃんと銀ちゃんは、相性が良さそうです。おたがいほほえみあって軽く会釈して挨拶してる感じで」
「えー、竜同士でなんて礼儀正しい!コウちゃんよろしくね〜」
空中に手を降る雪恵。
心から竜を信じ愛しているのがわかる。
(いい人に出会えて、いい職場で良かった…)
水と緑いっぱいのこの会社
『清流園芸(せいるえんげい)』
という。
清流→せいりゅう→青龍
(言葉がつながってる…)
青龍が率いるこの会社で、虹龍と銀龍が加わった。
職場には竜の好きな水と緑があふれている。
(幸せ…なんていい場所に来たんだろう)
得も言われぬ高揚感。
自分が喜ぶと
竜もうれしい
竜が楽しんでると
竜付き人もワクワクする
竜と
竜付き人は
一心同体
せっかく分かち合うのなら
喜びや楽しみ、幸せを共に
あなたの笑顔が
竜にとっての宝物
今日も、最良の一日を生きよう
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