第9話 重なる体験

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第9話 重なる体験

「私、思い出したことがある…」 「どうしたんですか?」 「小さい頃、家が火事になったの。隣の家のもらい火だったんだけど…。その時お母さんが私を抱えて逃げて、必死になって助けてくれたの!」 「えっ!?銀ちゃんが話してくれた前世と全く同じ出来事じゃないですか??」 「なんか増々リアリティが増してきたわっ。銀ちゃん…お母さん…」 こんなことってあるのか 銀龍が語ってくれた前世と同じ体験を 雪恵が体験しているなんて 「それにスイスって!私大学生の時無性にアルプスの山々に惹かれて、旅行に行ってる!」 「えっ!マジですか、ビックリです」 「それにチーズが子供の頃から大好きで」 「前世もお母様と自家製チーズを作っていたみたいですよ。あっ、銀ちゃんがうんうん、って相づちをうってる」 水七子は背筋が伸びる想いで、身が引き締まった。 己の能力が活性化しているのを感じる。 竜付き人が集うと、互いの力が相乗効果で磨かれるようだ。 「やっぱり風浦さんの力ってすごいね!」 「いやいやそれは、竜のおかげ。ここには3頭の竜がいるので、潜在意識に眠っている力を最大限に引き上げてくれるみたい。コウちゃんも、虹色の輝きが増しているのよ」 キラキラ…  キラキラ… エネルギーが満たされている虹龍は、 雨上がりの虹のように美しい。 「銀ちゃんはずっと伝えたかったことを新山さんに伝えることができて、穏やかな表情で喜んでいます」 「え〜、そうなんだ〜。銀ちゃーん、いつか私も直接会話できるようになるかなぁ」 雪恵はまた、空中に手を振っている。 「大丈夫ですよ。目には見えなくても、今銀ちゃんは新山さんの目の前で優しく微笑んでいますよ。そして魂はふれあい、そこに母子の絆がしっかりと結ばれているんです」 「銀ちゃん…そういえば私が竜に興味をもったのは、母が亡くなった後からだった」 「銀龍とシンクロしたお母様が、自分に気付いてもらうために、竜への興味を促したのかもしれませんね」 あまりに合致する出来事。 一致する符号。 これを、偶然という一言で片付けるには無理がある。 「それにしても、母親の想いって深いですね」 「お母さんはとにかく優しくて、子供心に深い愛情をかけてくれていたのが感じられたわ」 「前世のお母様は他にも子供がいたけれど幼くして亡くし、旦那さんは戦場へ行ってしまって、最後に残された唯一のあなたを本当に大切にしていたようです。 そんな大事な娘が自分の手の中で息絶えてしまい、悲しくてやりきれなくて、助けてあげれなかった、守れなかったと後悔と絶望の中、生まれ変わったら今度こそあなたを守るんだと、強い気持ちで転生を繰り返し、新山さんの魂を追いかけ、この日本で再び巡り合ったんです。 そして今世でも前世と同じような状況、火事にあい、無事助けることができた。そして成長した新山さんの姿を見てから他界された。だから、もう今世の課題はクリアできました。だから来世は、また違うものになるでしょうね。次の転生まではまだまだ時間があるから、それまでは銀龍とともに、新山さんの幸せを見守っているんです」 「私もなれるかな…お母さんみたいに、優しくて強い母親に」 「きっとなれますよ」 「全然、そんな相手まだ見つかってないんだけどw」 あせらなくていいわよ、雪ちゃん あなたは、あなたらしく 自分の道を歩んでいきなさいね… 母の思いをのせた 銀龍の言葉は やさしい風となって ふたりの間を吹き抜けるのでした。
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