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高校生の僕…最終決戦の始まり
虫の声しかしない険しい山道を越えていくと、次第に木々が鬱蒼としてきた。
それからしばらく行くと、丘のように盛り上がった場所に背の高い樹が林立している。その中に親玉のような10メートルはあるかという大きな樹が生えていた。
その大木は、血管のようににょきにょきと幹の部分から枝葉が生え、何重にもそれが幹に絡みついている。
そして、まるで心臓が血液を送り出すように、どくどくと樹全体が脈打っているのだ。
黒羽が立ち止まったので、僕たちはその樹の目の前にたち、ふたりで樹を見上げる。
「うわ、きもっ。これが大鬼丸?」
「静かに。…そろそろだな」
黒羽が人差し指を立てる。
静寂が訪れて、大木の頭上にぴったりと三日月が浮かんだ。
そのとき、樹の皮がはじけるように破裂した。
爆風と、乾いた樹の皮が矢のように降りかかり、僕は思わず、腕を顔の前に持ってきて、顔を覆う。
はじけた皮の裂け目から、めりめりと音を立てて巨大なスライムのようなものが溢れてくる。
それは、次第に圧倒されるほど大きな生き物を形づくった。
「うおぉぉぉぉ…!」
唸り声を上げたのは、ビルほどの大きさの巨大な鬼だ。
頭から鋭い角を2本生やして、腕も足も丸太のように太く、胸板は厚い。腰には瓢箪のようなものを吊り下げ、全身は不気味な、茄子の表皮のような色だ。
鬼が咆哮をあげると、反響した音が僕の肌に伝わり、僕の体をびりびりと揺らす。
「すげーー!!俺の描いた大鬼丸だ!!」
僕は両手を大きく広げて、大鬼丸をただ傍観する。
僕の胸は張り裂けそうなほど高鳴り、全身の血が沸騰しそうだ。
「危ない!晃くん!」
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