復讐

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 時は江戸時代。ある日、五十代の母親と二十代の息子が峠道を急いでいた。最初は小雨だったが、だんだん雨が強くなってきた。なおも峠道を行くと、一軒の茶屋があった。茶屋は閉まっていたが、二人は茶屋の軒先で雨宿りすることにした。そこで二人はしばらく休んでいた。二十分ほど経ったであろうか、そこに一人の武士がやって来た。この武士も突然の雨に、雨宿りをしに来たのだ。息子はその武士の顔を見てすぐに父の仇だと気がついた。母親は気づいていないようだ。武士の方から話しかけてきて世間話が始まった。息子はドキドキしながらも世間話を続けた。母親も相手の武士も気づいていないようだ。武士は 「お二人で旅行ですか?」 と聞いてきた。母親は 「亡くなった亭主の墓参りでして。」 と答えた。息子は刀に手をかけた。武士は 「そうてすか。」 とまだ気づいていないようだ。それからもしばらく話は続いた。喋っているのは母親と武士だけで、息子は時をうかがっている。そうこうしているうちに雨が止んだ。武士は 「拙者は急ぎますので。お二人もご無事で。」 と歩を進めた。息子は刀から手を離した。母親は会釈で武士を見送った。母親と息子はもうしばらく休んでから出発した。
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