『届けたい情熱〜超合金の筆〜』

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「158位……!?」  あまりの衝撃に声が漏れた。休憩中の別の社員がこちらを見ているのが分かる、が、それを恥ずかしく思う余裕もなかった。書籍化どころか、順位が50もダウンしていた。  なぜだ。なぜ、順位が落ちた。茫然自失のまま画面を下にスクロールしていくと、一言アドバイス欄には「もっと読者の心に届くような文章を意識しましょう」と、先月と全く同じ一文があった。孝久は何度も何度も、指でケータイ画面をなぞった。もっと読者の心に届くような文章を意識しましょう……読者の心に届くような……読者の心に……  茫然を通り越し激しい怒りが湧いてくる。「読者の心に」だと? 機械(AI)如きに何が分かる! ……だけどその怒りの炎もすぐに鎮火し、やがてどうしようもない虚しさが襲ってきた。バキバキと、心の筆が束ねられてはまとめて折られていく。 「なんでだよ……俺の文章って、そんなにダメなのかな……」  思いつく限りの手は打った。自分の理想は捨て、ランキングアップのためだけに心血を注いできた。それでも、届かない。最後の筆がポッキリと折れたのを見届け、孝久はケータイの電源を落とした。
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