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「相手は稀代の大泥棒で、変装の名人かもしれない。みんな注意するのよ」
ワンコーズは、あたしのいうことを全然聞かず「こっち」とドンドン客席を登っていった。
マーギを先頭にワンコーズは3階フロアにある貴賓室に到着した。
廊下から見える貴賓室のひとつから、男の人の怒鳴り声が漏れ聞こえた。
「何故だ? なんであ奴らのステージが盛り上がるのだ? せっかく私が紫水晶を抜き取って、あ奴らのステージをメチャクチャにしてやろうと企んだのに……」
アキモ伯爵の声。そりゃあアキモ48をつぶしちゃったことはゴメンチャイだけど、あたしら憎しでここまですることないんじゃない?
「まあ良い。私の芸術が参加できない音楽祭なんか、失敗すれば良いのだ。ハー、ハッハッハ!」
「そこまでよ、伯爵!!」
あたしたちは伯爵の貴賓室のドアを開け、中に入って仁王立ちした。
そこには伯爵をはじめ、オオカミのマスクをかぶったおつきの人が数人いた。
「これはこれは、私の芸術普及を邪魔した張本人たちがお揃いとは都合がいい。私のウサ晴らしに、ひっ捕まえてお尻ペンペンしてやる!」
伯爵は周りのオオカミマスクたちに目で合図を送った。
両手を挙げて襲ってくるオオカミマスクたち、中には照明用の燭台スタンドを持った人もいる。
燭台スタンドがあたしの肩口に当たる寸前、何かが部屋の中へ、閃光をきらめかせて疾風のように入ってきた。
キーン! ガチャ! スパッ! ビシッ!
真っ二つに切れて飛んでく燭台スタンドと、手首から血を流して後ずさりする人、蹴られて壁に飛んでった人、閃光の主はあたしたちの前に、あたしたちを守るように立っていた。
長い黒髪をポニーテールにまとめたその後ろ姿は……
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