BURN!

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 お店のスタッフさんが、あたしたちの朝食を持ってきてくれた。  パパとママは、アジの干物と納豆、ご飯と漬物にお味噌汁。  ママは帰国直後で食べたいのは分かるが、フレンチシェフのパパも和食。  実はパパ、自家製で漬物はもとより、納豆、味噌、醤油まで作る大の和食党。こんなところも、お祖父ちゃんと喧嘩する要因でしょう。  お兄ちゃんは朝からカレーライス。大きなとんかつまでトッピングして……   これで太らないのは羨ましい。  あたしの前には、トーストとプレーンオムレツ。ヨーグルトとフレッシュオレンジジュースが添えられている。  毎朝あたしにオムレツを焼くのは、お店の若手スタッフの役目。オムレツは洋食シェフの登竜門。パパの味覚を引き継いでいるあたしに食べさせて、評価が聞きたいとのこと。  カレーライスにドバドバ、ウスターソースをかけて食べているお兄ちゃんには、誰も味の批評を求めてこない。 「楽人(がくと)。私が旅行前に出した宿題、出来ているんでしょうね?」お兄ちゃんの音大の、客員教授をしているママがお兄ちゃんに問う。   「バッハ、ブラームス、ベートーベン、世界三大Bの和声法の違いでしょ。一応まとめたけど、気乗りしないな。何で世界三大Bにビートルズが入ってないかね~?」 「B‘Zとボンジョビが反対しているからだよ」パパがまぜっかえす。  お兄ちゃんは、話題を変えて「音、今日のコンテストに優勝してメジャーデビューが決まったら、レコーディングに参加させろよな」 「ニルヴァーナのカートコバーンみたいな、ディストーションがないなら考えとく」 「バカ言え。あのサウンドの良さがわからないなんて、まだおこちゃまだな」 「目玉焼き、肉まん、カレー、なんでもソースかけて食べている人にいわれたくありません~」  みんなが笑う。  久しぶりに家族四人で囲む朝食。あたしの大好きな光景。
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