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駅に着くと、みんなはもう集まっていた。集合15分前なのに。
「音。これ見て」
ギターの華子が新しいエフェクターを取り出す。
「オーバードライブじゃん、今日使うの?」
「ぶっつけなんだけど、やっぱ使ってみたくて。リハでイイ感じだったら本番でも使ってみる」
「あたしも弦を変えてきました」
ベースの紅子も自分のベースを指さす。
「あたしはねえ、あたしはねえ、うーんと…… スティックいっぱい持ってきた」ドラムの牧子は相変わらず明るい。
「月子? どうしたの?」
ひとり浮かない顔の月子に声をかける。
「今日、上手く歌えるか不安で2時間ごとに目が覚めちゃった」
「大丈夫よ、月子なら」
みんな口々に励ます。
「ウー! キタキタ、燃えてきた〜!! 円陣組もう」牧子が腕を挙げた。
あたしたちは円陣を組み、右手を重ねる。
「ビーチャイ、ビーチャイ、ビート アップ ソウル!!」
最後に元気よく、空にこぶしを挙げた。
あたしたち、BEAT CHILDZの出演前の儀式。
大手レコード会社主催の高校生バンドコンテストに、音源審査を通って本選に選ばれた私たちは、コンテスト参加規約の学校の制服を着て本選会場に向かった。
みんな燃えている。
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