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カウントなしで、月子がAm9とG7のカッティングを繰り返す。
はじめは抑えめ、月子のギターだけ。
8小節3拍目に牧子のタ、ト ゥントゥンとタムが鳴る。
9小節目あたまから、全員で一気に抑えていた力を爆発させる。
ハイトーンで弾きまくるリードギターの華子。
シンバルやタムで暴れ回るドラムの牧子。
スライドさせながら、しっかりリズムキープするベースの紅子。
あたしは、左手でストリングス、右手をピアノ音にしたキー坊の上で、軽やかに指を踊らせる。
イントロ終わりにコードE11の四分音符一撃。
そしてブレイク。
月子のクリスタルヴォイスが、静かに語るように流れる。
あたしたちのオリジナル『So Long~ じゃあね』
叙情的なギターカッティングからいきなりの炸裂、静かな語りヴォーカルから、サビに向かって激しくシャウト。
緩急とテンションコードを沢山取り入れたテクニカルな曲。
お兄ちゃんがアレンジに口出しして、とんでもなくムズい曲になって、弾くのが大変。
だけど、この曲のおかげで本選に進めたのだから、必死に練習した甲斐があった。
サビ終わりの月子のロングシャウトに被せて、牧子のギターソロ。
オーバードライブが上手くハマっている。
あたしは左手の音源をオルガン音に変えて、バッキング。ジョン・ロードのようにバロック奏法。
牧子のギターがスケールを登りきったとき、舞台がゴンっと縦に突きあがり、すぐさま大きな横揺れが起こった。
地震だ!! 結構大きい。
あたしたちは演奏をストップさせてしゃがみこんだ。
目の前で、まだリハのため固定していなかったキー坊が左右に振れる。
「あぶない!」あたしはあわててキー坊をおさえた。
しかし、跳ね飛ぶキー坊。そこに男の人の声で二度目の「あぶない!」
脚立に上っていた照明スタッフさんが、大きなライトと一緒に堕ちてきた。
重いライトに当たって、キー坊の鍵盤がバラバラとはじける。
ライトはそのまま床に落ちて大きくバウンド、あたしの頭に向かってきた。
大きなライトが、どんどん大きくなって飛んで来た!!
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