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トラブルがあっても、あたしたちはもう舞台に立ってしまっている。大会規約に、演者は舞台に立ったら10ドドキ(15分)以内に演奏を終了しないと失格になるとあった。
実際、今回初めて参加した10歳の女の子が緊張のあまり泣いてしまって、持ち時間に何もできず失格になってしまっていた。あたしたちに、例外が適用されるとは限らない。
タカミ様が言うには、盗まれた紫水晶はとても貴重で、今回は予備の用意はないとのこと。お手上げ状態だ。
メンバーみんな舞台真ん中に集まって相談する。
楽器やマイクがなくて演奏するには……
あたしはひらめいて、この間一回だけ練習した曲をみんなに提案した。
マーギがドラムに戻り、バスドラムを2拍踏み、3拍目に頭の上でスティックを鳴らす。
舞台にいるみんなも、足を2拍踏み鳴らし、3拍目に頭の上で手を叩く。
♪ドンドンチャ、ドンドンチャ、ドンドンチャ、ドンドンチャ。
フロントの4人で声を合わせて歌いだす。
♬勉強なんかはできないけーれど、これでもあたしら立派なこーども
♪いつかはこの歌みんなに聞かせて、大人になったらなるぜ大物
♬それまでひたすら練習しーて、あたしの歌をぶちかます
♪みんなに絶対約束すーるわ、あたしが世界を揺らしてやる
♬singin'
♪weeee,weee,weee,weee ロッキュー! ぶちかませ!!
(♪ドンドンチャ、ドンドンチャ)
♪weeee,weee,weee,weee ロッキュー! ぶちかませ!!
(♪ドンドンチャ、ドンドンチャ)
ザワザワしていた観客も、脈打つ心臓のようなリズムに合わせ、足を踏み鳴らし、手を叩く。
♬singin'
♪weeee,weee,weee,weee ロッキュー! ぶちかませ!!
(♪ドンドンチャ、ドンドンチャ)
いつの間にか始まる、観客との大合唱。
あたしたちのデビューステージは、観客との狂乱で幕を閉じた。
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