We  Will  Rock  You

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「「「ルーレ姉ちゃん!」」」  ワンコーズがルーレさんの足元に駆け寄り、舌を出して尻尾をブンブン振った。 「私はあれから女王陛下と和解して、音楽修行の資金援助を受けて旅をしているの。隣の貴賓室を貸してくれたのも陛下ね。そして伯爵の怒鳴り声を聞いて、いつ踏み込もうか? と思っていたら、まさかあなたたちに先を越されるとはね」  ルーレさんは後ろを向いて、綺麗な切れ長の目でウインクした。 「さあ伯爵、観念なさい。私の愛する音楽を、メチャクチャにしようとした罪は許さないわ!」  ルーレさんは、キタラのネックに仕込んだ刃を伯爵に向けた。  手を挙げて腰を抜かしている伯爵。  悪者ならどこかの伯爵を見倣って、時計台の上で闘わんかい!!  伯爵を衛兵隊に引き渡し、紫水晶を元に戻した。  音楽祭が再開され、お兄ちゃんの歌声が会場に響く。中には泣いている人もいる。  そんな中、あたしたちの失格が大会運営スタッフから告げられた。  大会規約に、エントリー曲と違う曲を歌ってはいけない、と明記されていた。 「あーあ…… クッキーもらい損ねちゃった」  ベーニがぼやいた。 「でも泥棒を捕まえたから、良かったんじゃない?」  ツークがなぐさめる。 「いいえ、泥棒ならまだいるわよ」  ルーレさんが、意味ありげな微笑みでいった。 「あなたたちよ。あなたたちは、とんでもないものを盗んだのよ」 「えっ?」  ルーレさんの言葉に、みんな首をひねった。 「観客の心よ!」  ルーレさんの言葉は、オヤツ一生分の満足感があった。
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