【3】出会い

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【3】出会い

 ヒヤリとした水がしっとりと肌になじむ。気持ちよくて懐かしい感覚だ。  俺は白い光に包まれて、人間だった形が水のように溶けて本来の姿へと戻っていく。  体は薄緑がかった淡い金色。お腹は絹のような光沢があり白くてつるつるしている。胸鰭や背鰭も光に透ける金色で、唯一口が――親指を二つ縦に並べたように分厚い。  俺の姿は、ぷるんとした桃色の大きな唇を持つとなった。  元々は仙人や神々が住まう【九仙郷(きゅうせんごう)】という世界にいたんだけど、人間に興味があって地上に降りてきてしまった。  けれど俺はまだ未熟で人間に化けるのがへただ。魚の姿で地べたにひっくり返っていた所を、鳳庵(ほうあん)師匠に救われて今に至る。   『命水(めいすい)』の泉は、地下を通じて各地に湧く別の『命水』と繋がっている。神魚である俺はそれを利用して、遥か遠く離れた西陵(せいりょう)の『命水』へ移動することができるんだ。  『命水』の中を泳いで半刻がすぎたかな。  前方の視界が明るくなってきた。  おや?  えっ?   水が……水が、ない?
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