【3】出会い

3/6
前へ
/21ページ
次へ
 大きな翡翠色の瞳。肩甲骨を覆うぐらいの長さの黒髪の少年。  そして何よりも感じる――命数筆(めいすうふで)翠星(すいせい)』の気配。筆を作った師匠の生気の気配が、眼の前の少年から確かに感じられる。 「お前、月桂(ゲッケイ)だな!」  俺は意識を集中させて、少年の手のひらから飛び出した。  ぱっと白い光に包まれた俺は、瞬く間に人間の姿で立ち上がる。 「さか、魚が人になった!?」 「そうだよ! 俺は涛淳(タオチュン)。お前は月桂だな!」 「お魚さんがどうして私の名前を知っているんだ?」 「魚、さかなってうるさいなあ。俺は今人間だろ? 見ろよこの美しい銀色の髪。九仙郷(きゅうせんごう)の御池と同じ、澄み切った深い瑠璃色の瞳。そして魅惑のつややかな桃唇(ももくちびる)。どう見ても美少年だろうが」 「うっ……よくわからないけど。九仙郷――仙界の眷属というのは理解した。そのお魚――涛淳(タオチュン)さん、何しにこんな所にきたの? ここは『九黒(クコク)』の気が濃くて、長くとどまると生気を吸われて命を縮めるよ」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加