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肩を貸してやったら気持ちが落ち着いたのか、月桂の頭が小さく縦に頷いた。
「母さんが……それを望んでいたんだ。緑の力を司る『四緑』の色命数士として、大地を蘇らせる方法を探していたけど……この地は母さんの命まで吸い取ってしまった。見て、涛淳さん」
月桂が俺から体を放して懐に手を入れた。
そこには淡緑色に光る一本の命数筆が握られていた。
「うお! それは『翠星』だな! よかった~筆が見つからなかったら、俺は一生店に戻れない所だったぜ」
「そ、そうなの。それは申し訳ない。これは母さんのお気に入りの『命数筆』だったんだ」
「そうかそうか。じゃ、返してくれ」
「あ、返すけどちょっと見て。この地の呪われた様を……」
俺は月桂から筆を取り上げようと思ったが、彼が色命数術を使い出したので手を引っ込めた。月桂は着物の袖から一枚の短冊を取り出し、右手に持った筆に意識を集中させていた。
『翠星』がきらきらと輝きを増している。
月桂が体内にある生気を筆先に集めているからだ。
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