【4】筆の秘密

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「良いぞ良いぞ。この萌える緑の命色! なんという輝き! 素晴らしい。この筆を使っていた人物は、さぞや心の美しい色命数士(しきめいすうし)だったのだろう。純粋な想いに満ちた……澄んだ輝きを見よ」 「師匠……どういうことですか?」  月桂が壊した筆の軸から、きれいな石が出てきた。初めて見る光景だ。 「『命数筆(めいすうふで)』の中には、術者の生気を取り込んで結晶ができることがある。『命石(いのちいし)』というのだがな。私はそれを集めるために筆貸しをしている。金なんかどうでもいい。欲しいのは『命石(いのちいし)』なのだ」  ぽかんと石を見つめる月桂に、師匠が深く頷いた。 「命石ができる条件は限られている。お前の母は立派な色命数士だった。それがこの証。誇りに思うがいい」  「ありがとう、ございます」  最初は怯えた表情だった月桂だが、師匠の言葉を聞いて落ち着きを取り戻したらしい。ぽんぽん、と師匠が月桂の頭を軽く叩いた。
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