弥一と〇ケ猫

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 あれからまた何日経ったのか。雨はまだ止まない。  あたしは、弥一を食べ尽くした。  そして突然、雨が止んだ。何事もなかったような、青天。  村は、死に絶えていた。  数日後、村に旅の坊さんがやって来た。村の皆をまとめて葬り供養して、最後に村はずれの弥一の家に気が付いて、小さな塚を建てて経をあげた。        ***  人一人食い尽くしたあたしは、もうただの三毛猫ではなかった。見た目は変わらないが、化け猫だ。  人の言葉を話せるようになったし、あの日から季節が十巡っても、百巡っても、千巡っても、あたしは死なない、死ねない。絶対に生き続けろ、死ぬなと言う弥一の願い、祈りのままに、あの言葉どおりに、今日もまだ生き続けている―。 FiN
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