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夜、完成したてるてる坊主を二人で窓辺に吊るしてから、カイトに「てるてる坊主の歌」を教えた。
大きな声で一緒に歌ってから、眠りについた。
「お母さん!虹だよ!」
そう言って起こされた時、私の頭はボーっとしていた。
いつの間にか、枕元にカイトが立っていた。
カイトが私の寝室に入ってきていることに、全く気づかなかった。
毎朝毎朝、いくら声をかけてもなかなか起きないカイトが、私より先に起きているなんて。
「虹?」
どうやら眠りが深かったらしい。
私は意識を覚醒させようと必死になりながら、なんとか一言だけ発した。
「起きてよ!雨が上がったんだよ!」
カイトが大きな声を出した。
興奮しているのが分かる。
「雨が上がったって、何…」
カイトのテンションは高くて、起きたての私はそれに追いつけない。
私の様子に痺れをきらせたカイトは、思い通りの反応を得られない苛立ちを表すために、わざとドスドスと歩いて窓辺へ行き、シャっとカーテンを開けた。
思わず目を閉じた、眩しい。
え?眩しい??
私の脳に衝撃が走る。
窓の向こうには青空が広がっていた。
そこには大きな虹も。
「僕がてるてる坊主を作ったからだよ、凄くない?」
「…………凄いね」
私はそれしか返せなかった。
「お母さん!消えちゃう前に、虹を見に行こうよ」
てるてる坊主を作ったのだから、晴れても不思議ないと思っているカイトは、現実の飲み込みが早い。
「早く!早く!」
カイトは急き立てる。
私は戸惑いながらも、カイトに虹を見せてやりたいと思う。
虹が消えてしまう前に、表に出なければ。
ゴミを出しに行く時にいつも羽織っているガウンを着て、玄関の扉を開けた。
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