6人が本棚に入れています
本棚に追加
「お父さんだ〜!」
カイトが歓喜の声を上げた。
そこに、アキトさんが立っていた。
アキトさんは国連の関連機関の職員だ。
仕事の内容は家族にも言えないらしく、何をしているのか私は知らない。
どこで働いているのかも知らない。
色んな外国のお土産を持って、半年ごとに一週間だけ自宅に帰ってくる。
たまにビデオ通話はするけれど、いつも変わり映えしない、どこも似たようなホテルの一室からだった。
今日、アキトさんが帰宅するなんて連絡はなかった。
日本にいたことも知らなかった。
「アキトさん、どうして…」
「車を用意してある、今すぐ行こう」
アキトさんが目をやった方を見ると、見たことのない車が停まっていた。
「え?あの車に乗るってこと?
待って、私、まだパジャマなんだけど」
「話は後で、急いでいるんだ、とにかく車に乗って欲しい」
アキトさんの口調は厳しくて、冷たくて、切羽詰まっていた。
何か、ただならぬことが起きているのは分かった。
だけど、何が起きている?
「カイト、お父さんが運転する車で、虹の端っこを探しに行こうか?」
アキトさんはそう言うと、カイトを抱きかかえて車に向かって歩き始めてしまった。
私も慌てて後を追う。
「虹の始まりが見れるの?
僕、すっごい楽しみ!」
久しぶりにお父さんに会えた上に、素敵な提案まで受けて、カイトは大はしゃぎだった。
最初のコメントを投稿しよう!