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「何があったのか説明して欲しい」
車の中でアキトさんにそう言われて、私は面食らった。
アキトさんの方から何か説明があると思っていたのに、まさかアキトさんに説明を求められるなんて、全くの予想外だった。
「説明して欲しいって言われても、アキトさんが何を聞きたいのか、私は見当もつかないのだけど…」
「すまない、急ぎ過ぎたね。
急に雨が上がったこと、何か心当たりはないかな?」
私は迷った。
アキトさんの様子は真剣だ。
心当たりといえば、てるてる坊主しかない。
だけど今、てるてる坊主なんて、そんな夢みたいな話をして良いのだろうか?
ふざけている場合ではないと、怒らせないだろうか?
「昨日、僕とお母さんでてるてる坊主を作って、一緒に歌をうたったんだよ!
そしたらね、本当に雨が止んだの!」
しばしの沈黙に、待ってましたとばかりに興奮しながらカイトが口を挟んだ。
カイトが言うのなら、こんな御伽話でもアキトさんが気分を害することはないだろう。
私はホッとした。
「そうだったのか、分かった」
アキトさんはそう言った。
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