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「え、妖怪? あめふらし」
「そうだ。雨を降らせる妖怪だ。お兄ちゃんの妖怪図鑑に載ってたぜ」
「ピッカリ〜ン! じゃあ、この子をどこかにやれば雨止むんじゃない?」
「かもな」
あたしは、青い顔したあめふらしさんに問うた。
「あの〜、妖怪あめふらしさん。あなた、妖怪あめふらしさんですか?」
「あのね。なにバカなこと聞いてんのよ。それに、さっきからのあなたの会話、全部聞こえてるわよ」
「あの〜、申し訳ないんですが、どっか行ってくれませんか?」
「単刀直入ね」
「明日、ひなちゃんの遠足なんです」
「遠足よりも楽しいことして遊べばいいじゃない」
「えっ? どういうことですか?」
「ひなちゃんは、雨好きよ」
「えっ?」
「去年もいっぱい遊んだわ。雨、雨、ふれ、ふれ、かあさんの〜♪、じゃのめでお迎えうれしいな♪ ピチピチ、チャップチャップ、ランランラン♪ 楽しかったなー」
「……なるほど。だけど、あめふらしさん」
私の中に、チラリとお母さんの意識が入った。
「TPOって言葉を知ってますか。Time、Place、Occasion。時間と場所、そして場面をわきまえて行動するということです。そして、明日はひなちゃんが楽しみに楽しみにしている遠足ですよ。それがどういうことか分かってますか!」
あめふらしさんの動きが一瞬とまりました。よし、効いてる!!
「TPOです! TPO! さ、さ、お帰りください」
「カーッ! 日和坊の使いだからって、日和坊みたいなこと言うんじゃないわよ。私、いやよ。だって呼ばれて遊びにきたんだもん。ひなちゃんと遊ぶもん。絶対、帰らないわ。ベー」
あめふらしちゃんが、あっかんべーをして、水溜りをビチャビチャ踏みました。どうやら怒らせてしまったようです。
「雨足強くなってきてるぞ」だいふく君がポツリと言った。
「どうしましょ。どうしましょ。そうね、まず気になることを聞いてみましょうか」
私は、怒って水をバシャバシャしているあめふらしちゃんに、さっきの事はなかったことにしてそっと聞いてみました。
「あの〜、日和坊ってなんですか?」
「あんた、そんなことも知らずにてるてる坊主やってるの?」
「す、すみません。だいふく君知ってる?」
「お兄ちゃんの妖怪図鑑にちょこっと出てきたな、晴れを司る妖怪だったような」
「そうよ。あいつ、いつも私に説教するから大嫌い。そして、てるてる坊主って日和坊の手下でしょ」
「えっ? そうなんですか?」
「知らないの? ほんとに大丈夫あなたたち」
「へへへ」
と笑ってる場合じゃないですね。どうしましょう〜。
「あの〜、じゃ、あめふらしさん、わたしたちと遊びませんか。それで満足してもらったら帰ってもらうというのはいかがでしょうか?」
「あなたたちと遊ぶの? プッ、何して遊ぶのよ。あなたたち動けないでしょ」
そうでした。
「だいふく君どうしましょう」
「歌で勝負だ」とだいふく君がポツリと言った。
あめふらしちゃんは、ちょっと考えたあと「いいわ」と答えました。
「やるじゃないだいふく君。これであとは勝てば、万事OK。で、何を歌うのだいふく君」
「いや、俺は歌はちょっと……」
「えっ?」
「歌ってくれ」
「えっ? ええーーーー! 私が」
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