梯子から、降りてくる者などいないのに

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降り注ぐ雨が、糸のように細くなっている。雨粒は、体に当たっても気づかないほどの小ささになってきた。 雲に厚みがなくなってきている。 灰色の雲は、急ぎ足で向こうへ流れている。 時折、灰色の雲の奥に、白く眩しい雲がのぞくようになっている。 (ああ、あんなところに、天使の梯子が下りている) 私はあの光を、洪水の起こる前のような気持ちで、再び眺めることができるだろうか。 雨が上がる、その喜びを抱くことができるだろうか。
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