梯子から、降りてくる者などいないのに

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夫が私を呼んでいる。 義父が、鳩を飛ばすようだ。舟から降りる場所が見つかるだろうか。 家族みんなが、義父の周りに集まっていく。敬虔なる義父の一挙手一投足を、疑うことのない目で見守っている。 夫が私へ手を伸ばした。 私は、少しのためらいを隠すように、その手を取ると、夫の隣りに並んだ。 鳩が飛んだ。 見送る私が抱くのは、希望か。それとも、諦念か。 鳩は天使の梯子のほうへと羽ばたいた。
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