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僕、雨上悠斗は雨男だ。それも楽しい用事がある日に限って雨が降る。
あぁ、この名前も嫌いだ。天気に振り回される僕の人生への皮肉か?
高校に入学してすぐの頃、こいつ、椎橋照に誘われて天文学部に入った。星座について調べるのは昔から好きだったから。夜空にロマンを感じる仲間ができたのは嬉しかった。
でも案の定というか、天体観測をしようという日はほとんど毎日雨になってしまった。そして僕が休みの日はほとんど晴れた。結局僕は天体観測をすることが叶わないまま天文学部を退部した。
思えば幼い頃からこうだった。ピクニックに行く日も遊園地に行く日もほとんど雨になった。
小中学時代のイベントで、快晴だったのは中学の卒業式くらいじゃないか? 9年間仲良くやってきた友達と離れ離れになるってことで前夜から泣き明かしていたのに、そんな僕を嘲笑うように、それはもう綺麗な青空だった。心の底から自分の運命を恨んだものだ。
5歳くらいまでは対処のしようもあったんだけど、最近はてんでダメだ。僕が行かない方が確実に晴れる。
「だいじょーぶだって。今日もこんなに晴れてるだろ? な?」
くそっ。しつこいなこいつ。
今日が晴れだからなんだ? それでも僕がいれば明日は雨になるんだよ。僕の雨を降らせる力を舐めすぎている。
「……悲観しすぎだって! 大丈夫! もっと明るく生きようぜ!」
椎橋は笑って言った。そういやこういう奴だよな。
照なんて名前に恥じないくらい太陽みたいに周りを照らす奴で、部活をやめた僕にもよく絡んでくる。
それに、どこか不思議な奴だ。今だってまるで僕の心を読んでるみたいに励ましてくる。なんか、こいつには全部見透かされているような感じがする。
「……あ、あのさ」
「ん?」
どうした? 喉から絞るような声を出して。
何をおどおどしているんだ。らしくもないな。
「あぁ、いや。明日来てくれるか?」
「あー」
椎橋は苦笑する顔すら爽やかだ。これが陽キャのオーラってやつ? あー、もう。
正直なところ、僕はもうほとんど折れかけていた。行けばいいんだろう。でも本当に雨が降っても恨むなよ。
椎橋はやっぱり言葉の一歩先を読んでいた。僕が返事をする前にパアッと明るい笑顔になって小さくガッツポーズをする。本当に変な奴だ。
まぁいいか。こうなったらもう、明日雨が降らないことを祈るばかり。
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