9人が本棚に入れています
本棚に追加
カフェにて
翌土曜、7月7日、梅雨の真っ只中。朝から外は薄暗い。
「本当に降るとはなぁ」
椎橋は呆れたようにそう言った。だから言っただろう。僕はビックリするくらい雨男なのだ。
僕の雨を降らせる力を舐めちゃいけない。分かっていたことなのに。少しでも期待した僕と君がバカだった。
今の時刻は19時過ぎ。晴れていたってまだ星空は見えそうにない時間だが、椎橋が「2人で会って話したいことがある」というので丘近くにあったカフェで待ち合わせをした。
20人くらいは座れそうな広さのあるカフェだが、雨のせいか閑散としていて数人しかお客さんが入ってない。曲名の分からないBGMに雨音が混ざって、かえって静まり返った空間に感じられる。
僕らは4人がけのテーブルを贅沢に使って座った。
「せめて夜にはやむといいけど」
沈黙に耐えかねて口を開いたが、途中で閉ざしてしまった。「何もせずにやむかどうか」。その言葉は飲み込んだ。言ったところでどうしようもない。行動を起こしたところでやむ保証もない。
あー、本当に言いたいことはこんなことじゃない。届いたアイスティーを一口飲んで、僕は改めて椎橋に向き合う。
「それで? 話したいことって?」
「あー」
椎橋は答えにくそうに言い淀んだ。レモン味のクリームソーダをクルクルとかき混ぜて時間ばかり浪費している。
なんだよ。らしくないじゃないか。いつもニカニカ笑って周りの人間を引っ張っていくような奴なのに。
なぜそんなに視線を泳がせる。お前がそんなだとこっちまで緊張してくるから、やめてくれ。
「気象操作……みたいなもんなのか?」
え?
最初のコメントを投稿しよう!