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気象操作って、言ったのか? 確かに言ったよな。え? いやいや。
「何言ってんだよ。僕はただの雨男だって」
「降らせるんじゃなくて、やませる方」
え、え、え。やばいやばい。
なんでバレてんの!?
「そ、そ、そんなわけ、ないジャーン?」
「でも」
「ハ、ハハハ、そんなことできるやついたらキモいだろ!? ありえないって! もー、変なこと言うなぁ!」
つい声が大きくなってしまった。何やってんだ僕。何ゲラゲラ笑ってんだ。そんなキャラでもないのに。
他のお客さんからの視線を感じる。穴があったら入りたい。
いよいよ居たたまれなくなって、そぉーっと何事もなかったかのようにアイスティーを一口飲む。味がしない。冷や汗の塩味を薄っすら感じるような、感じないような。氷がカランと情けなく鳴った。
「実は俺、人の心読めるんだよね。テレパシーってやつ」
うん?
え、急に何言ってんのこいつ。
聞き間違えかと思った。変なところに入りそうになった紅茶を、たくさんの空気と一緒に胃に流し込む。
え? 目ぇ伏せちゃってさ、しんみりしちゃってさ、え、急に何?
あ、あー、あれか。「変な能力使えるのお前だけじゃないから大丈夫だよー」みたいな? 変な同情で適当なこと言われてる?
いや、いやでもなぁ。辻褄は合う気がすんだよな。こいつ、変なところで察しいいもんな。実際何回か思ったことがある。「こいつ心読めるんじゃないか」って。
え? じゃあこうして考えてることも全部筒抜けってこと? え、どういうこと?
「キモいと思った?」
ギクッと肩が震えてしまった。思わず椎橋から視線をそらす。
え、本気で言ってる?
「ソンナコトナイヨ」って言うべきなんだと思う。うん、きっと僕に気を使ってこの質問をしてくれてるのだろう。「お前が俺をキモいと思わないように、俺もお前をキモいなんて思わないよ」って言いたいんだろうな。
でもさぁ、一般的な感覚として、自分の考えてることが全部相手にバレてたらさ。キモいとは言わないけど、何とも思わないって言うのも嘘になるだろ。
うーん、下手に嘘ついたところで絶対バレるわけだし。
「……ちょっとだけ」
「おいっ」
悩んだ末に正直に答えたら怒られてしまった。
チラッと椎橋の方を見ると、子供みたいな顔で唇を尖らせている。いつもヘラヘラしてることが多いから、なんか変な感じだ。
「そこは否定するとこじゃねーの?」
「いや、キモいっていうか、やりづらいっていうか……。こっちは椎橋の気持ちなんて分かんないだろ? だから一方的に気ぃ使われるしさ。口に出してないのに伝わるって、ちょっと疲れるかも」
「そっかぁ」
ヤッバい。心臓がバクバクいってる。
こいつマジで言ってるんだ。テレパシーなんて、ファンタジー世界だけの話だと思ってた。ヤバすぎ。
……いや、僕も似たようなもんか。
「天気コントロールできたらキモいと思う?」
「思わねーよ!」
即答したぞ。すごいなこいつ。普段通りニカッと笑って白い歯を見せている。マジで何とも思わないのかよ。
好き勝手に空を晴れさせられる奴がいたら、普通は多少何か思うもんだろ。
もう、いいよ。分かった。こいつには敵う気がしない。
「……子供の頃の話だよ。今はあんま操作できない」
僕は観念して話し始めた。
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