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 私はまあ、俗に言う引き籠もりだ。中学一年生だけど、春過ぎには学校に行くのを止めてしまった。  理由は……思い出したくもないけど、一言でいうとイジメ。何が気に食わなかったのかクラスカーストなるものが存在するならその最上位に立つ女子に目をつけられ、無視だったり、わざと肩をぶつけられたりと嫌がらせをされた。  イジメに対抗できるだけの強い心が備わっておらず、生来の人見知りで友達という味方を形成出来るほどのコミュニケーション能力も持ち合わせていなかった私はすぐに孤立してしまった。  そうして、学校に行こうとすると吐き気が止まらなくなって、一日休み、二日休みと繰り返しているうちに、部屋からもほとんど出なくなった。  お母さんは最初、学校に行くように言ってきたけど、何度もトイレで吐いている姿を見たからか、今では何も言ってこなくなった。お父さんは今でも、色々言ってくる。めんどい。  そうやって自室にこもってダラダラと時間を浪費していたある日、SNSのある書き込みが目に止まった。  それは、てるてる坊主が雨上がりに願い事を叶えてくれるという儀式だった。眉唾ものだと信じていなかったけど、特にやることもなく時間を持て余していた私は興味半分でその方法を試してみることにした。  願いごとは、友達が欲しい。にした。  本当は私をイジメた奴らが不幸になればいいだとか、仕返しをしたいという願いも思い浮かんだけど、もし本当に叶ってしまっても悪いと思うからやめておいた。それに、もし叶うと分かったら、クラス全員。見て見ぬふりをした教師だったり、無関心で助けてくれなかった奴らまで憎んでしまいそうだったから。  儀式の結果、現れたのがテルちゃんだった。彼女が自分で名乗ったのではない。私が名付けた。てるてる坊主だから、テルちゃん。安直すぎたかと、今では少し後悔してる。   引っ込み思案で自分から話題を振るのが苦手な私。対して、いつも元気で無邪気、好奇心旺盛なのかグイグイと話をせがんでくるテルちゃん。  わたし達はすぐに友達になれた。  テルちゃんは自身がてるてる坊主で、私の願いによって生まれたのだと理解している。雨上がりに現れ、数時間経つとまた元のてるてる坊主に戻ってしまう。  私の唯一の友達。  数時間だけの友達。  少女の明るさに私は救われている。彼女と居る時だけはこれからに対する不安だとか、他のみんなは学校に行っているのに、私だけが何もしていないという焦りから目を逸らすことが出来た。  私が雨上がりを好きになったのは、少女と出会ってからだ。雨が降るのが待ち遠しくなった。  私はテルちゃんと一緒に居られればそれだけで良かった。  他に願い事なんて無かった。  願っちゃいけなかった。
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