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会社を出て、地下鉄を乗り継ぎ、
秋津の住む北千住駅で電車を降りた。
ここから目的地までは、徒歩で10分。
途中のコンビニでワインとチーズを
いくつか購入し、小雨の降り出した
21時過ぎの路地を足早に急いだ。
「ケーキ買えば良かったかな」
オートロックなしの簡素な造り、
3階建のマンションに着き、
階段を登った。
細長い廊下を歩いていちばん奥の部屋、
そこが秋津の住処だ。
ドアホンを鳴らし、主が出てくるのを待ったが。
「あれ?いないのか」
何度鳴らしても、反応がない。
試しにドアノブに手をかけると、
静かにドアが開いた。
「秋津?」
恐る恐る足を踏み入れてみる。
玄関に揃えられた革靴はひとつ。
短い廊下の先にある磨りガラスのドアに
ちらちらと影が映っていた。
「何だよ、玄関開けっぱなしで不用心だぞ?」
靴を脱ぎ、廊下を歩いてドアを開けた。
「えっ!」
ドアの向こう側にいた相手の姿を見て、
俺は瞬時に動揺した。
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