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「み、宮嶋‥‥何だその格好は」
キッチンに立っていた宮嶋は、
ワイシャツの袖を捲り
グリーンのエプロンをつけていた。
「秋津は?」
「いないよ。部屋借りた。俺、実家だから」
「というか、何でエプロン」
「佐橋、エプロン姿が好きだって言うから」
ワインとチーズ買って来た?と
言葉を続け、宮嶋が俺に微笑んだ。
「買ってきたけど」
「メインはビーフシチュー。急いで作ったから
肉が硬かったらごめんね」
宮嶋が俺の手にあったレジ袋を取り上げ、
中身を確認した。
「あ。このワイン、俺の好きなやつだー。
佐橋、知ってた?」
「まさか」
この状況にまだ頭がついて行かない。
震えて止まない声を誤魔化し、踵を返した。
「手、洗ってくる」
洗面所に入ってすぐ秋津に連絡したくて
ポケットの中のスマホを探りかけたが、
背後から聞こえてきた宮嶋の鼻歌に戸惑い、
全身の力が抜けてしまった。
誕生日のサプライズにしては
手が込みすぎているぜ、秋津‥‥
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