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数十分前。
……これは、下駄箱での出来事だ……。
「よっし、結翔!帰ろうよ!」
「ん〜、ちょっと待って……なんか俺の靴箱にゴミ入ってた……。」
いつものように、朝陽と家に帰ろうとして靴を履き替えていたときだった。
一枚の紙切れが、地面にカサッと落ちる音がして気がついた。
その方へ目をやると……一枚の手紙が落ちていた。
ああ、すまん。ゴミじゃなかったみたいだ。
可愛らしいハート柄が描かれた封筒を手に取り、しばらくそれを眺めたあと中身を取り出す。
「……体育館裏、?」
そう呟く朝陽の声で、はっとした。
その手紙には、こう書かれていた。
「天江くんへ
放課後、伝えたいことがあるので、体育館裏に来てください。」
という短い文章だけが綴られていた。
これはまさか……「告白イベント」ではないか!?
体育館裏だの屋上だのに呼び出されて行ってみたら告白されちゃった〜的なあの……!!
学生なら一度や二度は必ず憧れるあの……!
「え、俺告白されんのかなぁ!」
そう朝陽に興奮気味に問いかけてみるが、
「でも結翔、これ、差出人がわからないみたいだけど。」
「あ、本当だ。」
朝陽にそう言われて封筒の裏をみたり、便箋をもう一度見たりしても手紙の主まではどこにも書かれていないようだった。
「これ、誰かのイタズラかもしれないよ。もしかして、本当に体育館裏に行くわけじゃないよね?」
朝陽がそう言って俺を止めようとしてくれたが、葛藤した末、やはり馬鹿でチョロい僕は好奇心が勝ってしまうようだった。
「うん、行こうかなぁ。もしこれがイタズラだったら、注意しなきゃだろ?」
俺がおチャラけながら馬鹿げた口実を述べるも、すかさず朝陽が止めに入る。
「何があるか分からないんだから、やめておいた方が良いよ。それに、結翔はいっつも危機感がないんだから。」
「なんだよ、危機感って。」
「だから……あぁ、もう!」
「はぁ?何キレてんだ、お前。俺は大丈夫だから、ほら、先に帰っといてよ。」
朝陽の額に、渾身のデコピンを一発お見舞する。
「もう、痛い〜……。」
もう俺は知んないからね!結翔のバカ!キモい!!宿題いっつも忘れてくるくせに!だのなんだの、背中の方から日頃の悪口を垂れる朝陽をよそに、今にもスキップしそうな気持ちを抑えながら早足で歩みを進める。
それは、体育館裏へ一刻も早く向かうためだった。
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