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「お、俺帰る!」
「結翔……?」
「じゃな、朝陽。早く体調治せよ!」
制服を掴む朝陽の細い手を振り解き、ガバッと背を向ける。
「結翔?」
気がついたら朝陽の部屋を飛び出していて、おばさんが何かを言うのも聞かずに走っていた。
違う、拒絶じゃない。
それに朝陽は告白のつもりで言ってるんじゃない、友達として言っているんだろう。
それか好きな女子と俺を見間違えたとか。
「そうだろ、俺の勘違いだ!」
どれだけ走っただろうか、疲労から公園の目の前にしゃがみ込む。
ジャングルジムの周りで男子小学生たちが鬼ごっこをしている。
両手で思い切り頬をバチンと叩く。
そうだよ、夢だ。夢に決まってる。
だって、俺らはただのクラスメイトなんだから。
朝陽だって、熱に当てられて少し様子がおかしかっただけだ。
それだけだ、ほんとに、それだけ。
アイツの風邪が治ったら元通りだ。
全部元通りになっているはずなんだよ。
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