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それを自覚したのは、忘れもしない、つい昨日の出来事だ。
学校へ行く準備をしようと、寝坊していたため急いで階段を駆け下りていたときだ。
まだ寝ぼけていたためおぼつかない足どりでドタドタと歩いていたことに加え、心の底から焦り散らかしていたのが悪かったのか、うっかり階段から足を踏み外してしまった。
「うぁぁっ……!?」
咄嗟に手すりに手を伸ばすも、残念ながらその手は何にも触れることなく空を切った。
重力に従って、身体ごと宙に投げ出される。
そして自身が掴もうと試みた階段の手すりに頭をぶつけた瞬間、全てが走馬灯のように蘇ってきたのだ。
「ねぇ〜、結翔お兄ちゃん〜!!このゲーム面白いからお兄ちゃんもやってみなよー!!」
「結翔お兄ちゃん〜?ほらほらぁ、見て!このシーン、すごいエロくない??」
なんだ、なんなんだ、これは。
一瞬、困惑こそしたものの、しばらく経てばその状況は容易く理解することが出来た。
我ながら、よくあんなに冷静で居られたものだなと思う。
前世だ、前世の記憶なのだ。
俺は、前世で俺の弟が進めてきたBLゲームの世界に迷い込んでしまったのだ。
忘れもしない。
あの過激なイラストに過激なボイス……。
弟が嫌がる俺をよそに、たんたんとそれ腐教してきた記憶が蘇ってきたのだ。
確か、今世の俺の容姿によく似たキャラクターも登場していたはずだ。
……不幸なことに、そのBLゲームの主人公として。
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