君は凛々しかったよ

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 僕はそこを通過する時、ハッとした。 その女性は、ヘルメットを被っていたけれど真っ黒に日焼けしていた。 ハッとしたのは、日焼けしていたからではなくて、その人が中学の時のクラスメイトだった木村さんだと思ったからだ。 この連日の猛暑だ、日焼けしてしまうのも当然だ。 木村さんはとても美人だった。誰かと連むタイプではなく静かで頭も良かったけど僕は何だか近寄りがたかった。 一度、安全委員を一緒にやったことを今でもよく覚えている。 自転車通学者が多かった中学校だったので、安全登下校に尽力する委員会だった。 自転車の並進をやめよう!みたいなポスターをみんなで描いて校内に貼ろうという活動をした時のことだ。 大型トラックに追い立てられて、並進する二人の生徒が慌てている絵を描いたポスターを見て木村さんが「中村くんて絵がうまいんだね」とボソッと言ってくれたのが嬉しかった。 滅多に話さない木村さんから褒められたことがわけもなく嬉しくてずっと忘れられなかった。
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